グーグルマップ“悪質”口コミでゆがむ「本当にいい店舗」探し… 被害に苦しむ医師ら4月に集団訴訟も、グーグルの見解は?
店舗、そしてユーザーにも悪影響のある悪質な口コミ
店舗運営側にすれば、悪質な口コミは経営を揺るがすほどの大ダメージにつながりかねない。一方、グーグルマップで店舗探しをするユーザーにとっても、心ない悪評は検索精度を狂わせる“ゴミ情報”となる。悪い口コミと低い点数を参考に、訪問候補から排除した店が、実は書き込みが虚偽で本当は優良店舗だった――そんなことがあるとすれば、ユーザーはみすみすいい店舗との出会いの機会を奪われることになる。 悪質な書き込みは、経営側にもユーザー側にも負の要素しかないといえるだろう。
感想と誹謗中傷の境目は?
「あくまで感想です」。書き込んだ人がそう言うなら、それ以上どうしようもないのかもしれない。だがそうなると、書き込み内容のどこまでなら感想として許容され、どこからが営業妨害につながりかねない誹謗中傷となるのだろうか…。 「誹謗中傷は、誹謗と中傷の2つの言葉が合わさったものです。誹謗は根拠なく他人を悪く言うこと。中傷は他人を傷つけるという意味です。一方、批判は人の言動などの誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じることという意味。根拠があるかないかが大きな違いになります」 こう解説するのは、ネット上の誹謗中傷トラブルに詳しい瀬戸章雅弁護士だ。続けて補足する。 「感想は自分が感じたことを述べること。意見は自分が正しいと思うことを相手に提案すること。そこには相手を傷つける意図はないことが誹謗中傷との違いといえます」 感想か、誹謗中傷か…。ここを争点にすれば、議論が平行線をたどる可能性もあり、得策とはいえないだろう。
訴訟のターゲットをグーグルに定めた理由
だからこそ、集団訴訟にのぞむ医師らは、ターゲットを投稿者ではなく、問題投稿を放置したプラットフォームのグーグルに定めた。今回の集団訴訟には加わっていない都内の精神科医に話を聞くと「私も投稿者より管理する側に問題を感じる」と同調する。 「ウチもグーグルではスコアは『2.9』。悪い病院に見えちゃうでしょ。でも、精神科だと、患者さんが『自分の話を誰にも聞いてもらえない!』と興奮状態にある方も少なくなくて、診断するために冷静になるようお願いしても、怒ったまま出て行かれることも。直後に、『この病院はクソだ!』とか、『私が明日自殺しても平気な医師だ』とか書かれたりします。医師として反論を書くことはできないので、つらいですが、患者のぶつける感情も理解できなくはないんです…」(前出の精神科医) グーグルはガイドラインを設け、そこに虚偽やハラスメント、ヘイトスピーチなど禁止事項を多数記載している。その通りに投稿が記載されていれば、こうした被害は起こり得ず、いい店舗との出会いを増幅してくれるイメージもわいてくる。だが、実質的にそれらを熟読してから投稿する人がどれだけいるかははなはだ疑問だ。 前出のラーメン店店主も「グーグルは自分で掲げたポリシーを十分に実行できていない。削除まで4か月もかかったら被害の方が大きい」と憤る。店側が返答を掲載することもできるが、炎上リスクがある。病院の場合は、投稿者に心当たりがあっても「医療の守秘義務もあるので飲食店以上に反論しにくい…」(前出の精神科医)と職業的な悩ましさもある。