新居浜太鼓祭り スゴ技はこう生まれた!寄せ太鼓の謎【前編】西条祭りと関係あり!?
実りの秋、祭りシーズン真っただ中です。愛媛では県都松山市の祭りが終わり、10月中旬から東予地方へと熱気が移っていきます。 新居浜太鼓祭りは16日から3日間(大生院地区は15~17日)。市内8地区から、太鼓台と呼ばれる山車が今年は51台繰り出します。大太鼓を積んだ高さ約5・5メートル、重さ約3トンの巨体から「ドン、デン、ドン」と音が響き、「ソーリャ、ソーリャ」の威勢のよい掛け声が、そこここでこだまします。 見どころは、地区ごとに神社の境内や河川敷などに太鼓台が集合する「かきくらべ」です。 祭り随一の観客が詰めかける山根グラウンド(角野新田町3丁目)では、独特のかきくらべスタイル「寄せ太鼓」が知られています。 ■差し上げと寄せ太鼓 かきくらべの基本の技は「差し上げ」と呼ばれています。 太鼓台1台に、かき手は約150人。4本のかき棒に分かれて並び、こん身の力で両手を高々と伸ばし3トンを持ち上げます。これが「差し上げ」です。1台ずつ、あるいは複数台が横に並び、一斉に差し上げる姿に歓声と拍手が起こります。 「寄せ太鼓」は、さらにここからの技です。横一列に並んだ太鼓台が、両隣の太鼓台との距離を詰め、かき棒同士をぴったり合わせます。そして、そのまま横に連なった状態で、一体となった差し上げを行うのです。 力はもちろん、長さ約13メートルのかき棒を平行にそろえる繊細な調整が必要で、かき手が必死の形相で、お互いの太鼓台を絶妙なバランスで保っています。 棒の上の指揮者、地上の幹部、そしてかき手、関わる全員が息を合わせ、独特の掛け声「ソーリャ、エンヤ、エンヤ、ヨイヤサーッ」を合図に高々と差し上げると、金糸銀糸の刺しゅうに彩られた豪華な飾り幕が輝き、房が揺れます。1台でも見応えがある差し上げを、何台もそろえて行うと群舞のような迫力です。 「寄せ太鼓」は現在、新居浜市内の数あるかきくらべの中でも、上部4地区(中萩、泉川、角野、船木)が集まる山根グラウンドだけで行われています。 この独自ともいえる技はどのようにして生まれ、広まったのでしょうか。 ■西条まつりと関係が? ルーツを探る手がかりのひとつが、お隣の西条祭りにありました。 西条祭りといえば豪華絢爛な「だんじり」が有名ですが、新居浜市大生院地区と隣接する西条市の船屋、下島山、飯岡の4地区は、飯積神社(西条市下島山)を氏神として、秋祭りにはみこしのお供として太鼓台を運行します。 飯積神社の祭礼最終日の17日には、神社前を流れる渦井川の河原に氏子の11台の太鼓台が勢ぞろいし、みこしとともにかきくらべを行います。そして、それが西条祭りのフィナーレとして毎年のように新聞でも報道されています。 この様子はまぎれもなく「寄せ太鼓」です。 ■「寄せ太鼓」と「寄せがき」は同じ?違う? 西条・飯積神社の氏子で新居浜祭りもよく知る人は「寄せがきは、寄せ太鼓よりずっと前から行われている」と話します。 寄せがきの方が古い・・・ということは、ここから発展して寄せ太鼓に? そこで、飯積神社の太鼓台のひとつ、新居浜・大生院地区の下本郷太鼓台運営委員長・武田軍司さん(51)に疑問をぶつけると、寄せがきについては「飯積さんではずっと昔からやってる。それがいつからかは分からんなあ」との答えでした。 そして耳寄りな情報を教えてくれました。武田さんは「寄せがきを新居浜の岸之下(太鼓台)に教えたのは自分たち(下本郷)だ」というのです。 岸之下太鼓台の地元は中萩地区で、上部4地区の一つです。山根会場での寄せ太鼓の技は、もしや岸之下太鼓台が発祥なのではないか、そんな仮説が成り立ちます。
愛媛新聞社