【浸水隠しの末に】JR九州社長「できれば続けたかった」クイーンビートル再開断念「損傷部分を改修しても安全運航は厳しい」30年続く日韓航路から撤退
FBS福岡放送
JR九州は23日、博多と韓国・釜山(プサン)を結ぶ高速船クイーンビートルについて、運航再開を断念し日韓航路から撤退すると正式に発表しました。クイーンビートルをめぐっては、浸水を隠しておよそ4か月間、運航を続けていたことが明らかになり、運休が続いていました。
23日午後2時半すぎ、JR九州の古宮洋二社長が臨時の記者会見を開きました。 ■JR九州・古宮洋二社長 「今後の継続的な事業運営などを総合的に考えた結果、JR九州高速船の船舶事業から撤退することを決定しました。」 博多と韓国・釜山の間で運航するクイーンビートルの運航再開を断念し、日韓航路から撤退すると正式に表明しました。
■古宮社長 「(経営の)多角化の象徴といいますか、非常に大きな事柄と思いますので、できれば私は続けたかった。非常に残念ではありますが、この状況の中では、ある意味、仕方がないのかなと。」 クイーンビートルをめぐっては、JR九州の子会社であるJR九州高速船が、船首部分への浸水をことし2月に把握しながらもおよそ4か月間、運航を続けていたことが国の抜き打ち検査で発覚しました。浸水センサーの位置をずらすなど、隠ぺい工作を行っていたことも明らかになっています。
10月には海上保安庁が船舶安全法と海上運送法違反の疑いで、強制捜査に乗り出しました。 一連の問題を受け、JR九州は11月、隠ぺいに関わったJR九州高速船の前の社長ら3人を懲戒解雇しました。古宮社長は、船の改修や社員の安全意識の向上など対策をした上で、運航再開を目指すと何度も強調していました。しかし12月、運航再開を断念する可能性にも言及していました。 ■古宮社長 「運航再開を考えているというか、いろんな選択肢がありますということ。(断念は)いろんな選択肢がある中の一つとしてはあるかもしれない。」
1991年に誕生した日韓航路を結ぶビートル。その新型として誕生したのがクイーンビートルです。 ■樋口淳哉記者 「先ほど到着した新型高速船がこちら、その名もクイーンビートルです。」 総工費およそ57億円をかけ、乗った人が「女王様のようにくつろげるように」という思いを込め、クイーンビートルと名付けられました。片道およそ3時間40分で日韓を行き来して、ビートル時代と合わせせて、延べおよそ680万人が利用してきました。 苦渋の決断を下した古宮社長は、理由について。 ■古宮社長 「安全を軽視して運航することはできませんので、今回の撤退の判断に至った。抜本的なハード対策ができなかったというのが、一番の原因になります。」 船体の損傷部分を改修したとしても、長期的に安全に運航することは厳しいとの見方を示しました。 ■街の人 「今まで普通にあったので、急になくなって困る人がいる。韓国の人とか日本の人とか、行きにくくなるのかなと。」 「人の命をなんだと思っているのか。ましてや、JRが隠蔽するなんて。行こうと思っていたのにダメだった。せっかくここは近くて、韓国に行くのに皆さん利用していたので、本当に残念。」 ■鬼丸ゆりか記者 「日韓航路から撤退すると発表されたクイーンビートル。きょうも博多港に停泊したままです。」 30年以上つないできたJR九州の日韓航路。来年は、日韓の国交正常化から60年を迎えます。さらなる両国間の交流が期待される中、水を差す形となりました。