鎌倉時代の写本に触れる 津高で学芸員の古典講座 三重
【津】博物館学芸員による古典講座が12日、三重県津市新町の県立津高図書館であった。同市垂水の石水博物館学芸員、桐田貴史氏(30)が鎌倉中期の源氏物語写本など収蔵資料13点を持参し解説。1―3年生と教員ら計22人が、貴重な資料を間近で見学した。 桐田氏は源氏物語について、全てを紫式部が書いたのではなく、書き写される際に話を継ぎ足したり膨らませたりしている「日本の同人誌文化」と解説。全54帖を短くまとめたものや絵を楽しむものなど、さまざまな形で今につながっていることを紹介した。 生徒は桐田氏の指導の下、源氏物語写本や古今和歌集のページをめくり、紙の質を体感。庶民の本に比べ江戸期に藤堂家に伝わった本は重みがあるなど、手にして比較した。 1年の西屋柊佑さん(15)は「ページが薄くてすぐ壊れそうだった。昔の人が書いた資料に触れることができ、進路を考える材料になった」、3年の小西花蓮さん(18)は「(短くまとめたものなど)読みたい気持ちを応援する本がいっぱいあったことに愛を感じた」と感想を話した。 同講座は若い世代に博物館に足を運ぶきっかけにしてもらおうと同館が呼びかけ、放課後の講座で実現。桐田氏は文化財を館外に持ち出すことは危険としつつ「若い人が古典を学ぶ機会が減りこのままでは800年残ったものが向こう800年残らない危機的状況。古典籍が現代につながっていることを感じ残していく担い手になって」と力を込めた。