予選5試合で32得点!! 「超攻撃型」にこだわった那覇西、宜野湾に4発快勝で4年ぶりの選手権出場!!
[11.9 選手権沖縄県予選決勝 那覇西高 4-1 宜野湾高 タピック県総ひやごんスタジアム] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 20年を最後に冬の舞台から姿を消していた沖縄の名門が4年越しの雪辱を果たした。 21年は県大会4強で姿を消し、22年と23年は決勝まで駒を進めるもPK戦負けを喫した那覇西高。「『PK練習までしたほうがいいんじゃない?』という声も耳に入っていた」(運天直樹監督)と苦汁を飲まされたこともあったという。それでも伝統的に攻撃重視のサッカーを貫いてきたチームは「面白いサッカーをするけれども勝負弱い」というレッテルを剥がすべく、2年目の運天監督の下、さらなる進化を求めて「超攻撃型」にこだわったチームづくりで地力をつけてきた。 12月で57歳になる指揮官は、幼少の頃の英雄だったボクサーの具志堅用高のファイトスタイルを例に「攻めの姿勢を最後まで貫いて、相手に打ち勝つサッカーで強い沖縄を見せたい」というポリシーを掲げる。そこに呼応したのが、去年2年生ながらボランチとして攻守の要を担ったFW與古田頼(3年)。「負けたときの悔しさは誰よりも知っているつもり」と自責の念に駆られ、新チームの10番を背負うようになってからは戦闘的なプレーとボールキープ力を買われてFWへ転向し、チームの火力を高めることに集中した。 そして與古田を軸に那覇西の超攻撃型サッカーは花開く。本大会は2回戦から登場し、準決勝までの4試合で28得点を記録。さらにリスクを負うサッカーを展開するからこそ守備も鍛錬され、ジュニアユース「ヴィクサーレ沖縄FC」時代からCBでコンビを組む主将のDF上地克幸とDF亀田安澄の両3年生が中心となり、攻め込まれても焦らずチャレンジアンドカバーで相手の攻撃の芽を摘み、無失点で決勝進出を決めた。 頂点をかけ、那覇西は宜野湾高と対戦。今年2月の新人戦において0-1で敗れた相手を前に「目標だった三冠を阻止され、絶対に借りを返したいと思っていた」と、チームを束ねる上地を中心にまとまった那覇西は前半10分にFW玉寄一星(3年)が先制点を奪うと、6分後にも玉寄が連続ゴールを決めて突き放す。 2点を追う宜野湾は「自分たちの力を信じて臆病になるな」と、気持ちを高める天願匠監督のゲキに応えるべく反撃態勢。中盤でセカンドボールを奪取すると、スルーパスを受けたFW新屋歩武(3年)がシュート。GKが弾いたボールをFW比嘉憲聖(3年)がヒールでPA内中央のスペースへ落とし、最後はMF島袋善考(3年)が地を這う鋭いシュートを放つ。しかしわずかにゴールの左に逸れ、点差を縮められなかった。 危機を脱した那覇西はこの試合のテーマに掲げたサイド攻撃を繰り出すと、前半アディショナルタイム。右CKの場面でキッカーのDF宮里豪(2年)が蹴り出したボールのこぼれ球に反応した亀田がボレーシュート。跳ね返されるも、ペナルティーマーク付近で待ち構えていたMFチメズ・ビクター・チュクンマ(3年)が豪快にネットを揺らす。セットプレーでも力強さを発揮した那覇西が3点目を奪ったところで前半が終了した。 前半の勢いのまま那覇西は後半2分にも好機到来。去年負った左膝前十字靭帯断裂を乗り越え、今年7月の全国インターハイで復帰した宮里がドリブルで左PAへ進入。ふわりとしたクロスをファーサイドの與古田がダイレクトで折り返し、最後はゴールエリア付近からMF屋比久愛都(3年)が沈めて4点目を奪った。宜野湾もボランチのMF島袋佑(3年)を起点に反撃ののろしをあげ、後半40+4分にDFラインの背後を取った比嘉がペナルティーアーク付近からのミドルシュートで1点を返したが、その1分後に試合終了の笛が鳴り響いた。 果敢にボールを奪いに行く攻撃的守備が連動し、最後まで走り切る姿勢を貫けたのも「悔しい思いをしてきた先輩たちの分もみんなで背負ってきたから、チームとしてつながったと思う」と主将の上地。攻撃の軸を担った與古田も「チームの雰囲気が悪くなったときに自分の声で雰囲気を変えられるかが大事だと思っていた」と終始声がけを絶やさず、個性派が揃うがゆえに歪になりやすいチームを統率した。そして前傾姿勢を崩さず「勇気を持ってボールを握り続けたことに尽きる」と、安堵の表情を浮かべながら話した運天監督にとっても伝統校を指揮する責任と重圧を感じながら掴んだ栄冠となった。 4年ぶりの檜舞台へ、直面した逆境を力に変えた那覇西が挑戦心を胸に帰って来る。 (取材・文 仲本兼進)