マイナス30~40度の極寒の早朝。男性は黙々と家畜の世話をする
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚ましい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのでしょうか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
2018年の2月と8月。2015年の夏にお世話になった内モンゴルのブリヤート族の男性、スレンジャッブさんに会うため、フルンボイル草原を訪れた。そして、スレンジャッブさんの家に泊まって、朝早くから働く彼とその家族の生活に触れることができた。 寒い冬の朝、家畜の囲いをきれいにし、牛糞を全部ラクダ車で集め、1か所に降ろして乾燥させる。そして、ラクダのそりで500キロの乾燥させた草を引き、家畜にまんべんなくあげていく。スレンジャッブさんは、こうした作業をマイナス30~40度の中で黙々と続けていく。途中、子供と奥さんも手伝いにやってくる。全ての作業を終わらせると、ようやく朝食の時間だ。 彼の話によるとブリヤート族が1920~30年代にこのあたりに移住した時から、すでにラクダの車やそりを使っていた。おそらくロシアの影響ではないかという。現地のバルグ族は、日常生活にこうしたものを使わない。冬の取材が終わって、高速道路の近くまで10キロの雪原をラクダのそりに乗せて送ってもらったことがある。寒かったが、楽しい体験だった。(つづく)
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きる―内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。