ワクワクするアート 北九州市で「安野先生のふしぎな学校」展
絵本や風景画で知られ、国内外で高い評価を得た画家・安野光雅(あんの・みつまさ)さん(1926~2020年)の作品展「安野先生のふしぎな学校」が7月6日、北九州市戸畑区の北九州市立美術館 本館で始まりました。戦後の物資不足の中、教材を自作して独創的な授業を行ったという教員時代に着目し、学校の授業科目に見立てた構成で作品を紹介。ユーモアと不思議にあふれる作品が並び、関係者は「子どもも大人も幅広く、自由な感性で楽しんで」と来場を呼びかけています。8月25日まで。 【写真】ユニークな作品が並ぶ会場
“ノーベル賞”も受賞
安野さんは自然豊かな島根県津和野町生まれ。「あの山の向こうには何があるのだろう」と思いをはせながら育ったといい、豊かな空想力で数々のユニークな作品を生み出しました。 小学校の美術教員を経て、1961年に30歳代半ばで画家として独立。68年に文章がない『ふしぎなえ』で絵本作家としてデビューし、『さかさま』や『旅の絵本』シリーズなどを次々と刊行しました。ポスターデザインや本の装丁も手がけ、テレビやラジオ番組でも親しまれました。 84年に「児童文学のノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞の画家賞を受賞。2012年に文化功労者となるなど、国内外で高く評価されました。20年に94歳で亡くなってからも、多彩な作品は人々を魅了し続けています。
授業科目に見立てて
作品展「安野先生のふしぎな学校」は、2022年春に京都市で開かれた後、広島、兵庫でも実施。今回の北九州会場は4か所目で、九州初開催です。 会場に展示されているのは、津和野町立安野光雅美術館が所蔵する原画や関連資料など計約180点。学校の授業に見立て、「こくご」「しゃかい」といった7科目と、「朝の会」や「終わりの会」などに分けて紹介しています。 「こくご」では、光と影の二つの世界を切り絵と水彩画で表現する物語『かげぼうし』のほか、森鷗外や樋口一葉らの文学作品の装画を紹介。「さんすう」では数字を題材に描いた『かぞえてみよう』、「りか」では天動説をテーマにした作品などが来場者を迎えます。 きめ細かく描かれた森の中に、たくさんの動物が隠れている『もりのえほん』などを取り上げる「ずこう」や、歌の世界を表現した作品が並ぶ「おんがく」も。「しゃかい」では世界の様々な風景画、「えいご」ではイソップ物語から発想した作品などを展示しています。 会場を進む間、「コレはどう見える?」と次々に問いかけられているようで、まるで“安野先生の教え子”になった気分に。開催に合わせて来場した安野光雅美術館の大矢鞆音(ともね)館長は「安野先生は『不思議に満ちた世界』を発見し、絵にしてみせた天才。発想のおもしろさや表現のしなやかさ、絵画にしていくアーチザン(職人)的な集中力も感じてもらえたら」と期待。「安野先生は『絵はどう見てもいい』とおっしゃっていた。いろいろな見方で、楽しんでいただきたい」と話しています。