チャン・チェン×藤井道人監督、「手を組んで数倍の効果を生み出せた」 映画『青春18×2君へと続く道』インタビュー
■プロデューサーとしても一流だったチャン・チェン
本業の俳優としてチャン・チェンが本作に出演する選択肢は、お互いに「なし」で一致していたという。藤井監督は「今回は初めからプロデューサーとして作品に向き合いたいということでした。それに、チャン・チェンさんには主演で出ていただけるような映画をいつか撮りたいと思っています」。 チャン・チェンも「今回はプロデューサーとしての務めに徹しました」としつつ、「プライベートで監督と将来、演じてみたい役の話はしました」と明かす。「藤井監督も私も、今、このタイミングで初めて国際共同製作に関わることができて良かったと思っています。日本のチームが台湾に来て、台湾のチームが日本に行って、交流して映画をつくる良さも試練も学ぶことができました。藤井監督が国際共同製作に興味を持ってくれたなら、今後もチャレンジしていただきたいです」。 プロデューサー業に徹したチャン・チェンは、撮影中はあえて現場に顔を出すことを控えていたそうだ。その理由として、「撮影に入る前の準備期間にしっかりコミュニケーションを取って、確認しました。撮影が始まったら、監督を信頼して、監督の考えを尊重して、支持するだけです」ときっぱり。 信頼して任せてくれた上に、最後までサポートしてくれたチャン・チェンに、藤井監督は感謝しかない様子。「ジミーの中国語の台詞をより自然に、言いやすく調整してくれたり、アフレコでこういう台詞を入れたらいいんじゃないか、とアイデアをくれたり、チャン・チェンさんのサポートが本当にありがたかったです」。 俳優だけでなく、プロデューサーとしてのポテンシャルの高さを示したチャン・チェン。本業は俳優であることに揺るぎはないが、「プロデューサーとして、これまで出会うことのなかった人たちに出会い、さまざまな問題にも直面しましたが、俳優には経験できないことも多く、夢中になりました。今後、機会があれば、また挑戦したいです」と意欲十分だ。 ■「監督人生第二章のはじまり」の真意とは 本作を「監督人生第二章のはじまりであると自負できる作品になった」と公言している藤井監督は、その真意をこう語っている。 「20~30代前半を第1のフェーズとした時に、何もないところからもがいてたくさん失敗もしたけどなんとか結果を出せて、仲間も増えてここまで来ましたが、『もっと広い世界を見たい、文化や言葉を越えて映画とつながりたい』という思いがずっとありました。ずっと目標としてきたものが叶ったのが、本作です。 今回『映画の神様っているんだな』と感じたのが、僕はこの作品を主人公のジミーと同じ36歳で撮影したんです。そういった意味ではどうしたって自分を投影した作品になりますし、映画を撮ることで36年分の人生と向き合う時期が来たんだと思いました。『青春18×2』との旅は、年を経るごとに増える“喪失”や、“大人としての振る舞い”をするために心の奥底に格納した感情と、一つひとつ対話していく時間でもありました。 また、『今までのつくり方にみんな飽きてきたでしょう?次に行こうよ』という意味でも、僕たち30代が率先して実行していくという意思表示としても『第二章』という言い方をしています」。 ■『青春18×2 君へと続く道』ストーリー 18年前の台湾。台湾人の青年のジミーと、一人旅で台湾に訪れていた日本人バックパッカーのアミがひょんなことから同じバイト先で働くことに。二人はひと夏を共に過ごす“青春の日々”を送る中で、お互いに想いを寄せ合うようになる。しかしそんな二人のかけがえのない日々は、アミの帰国により突然幕を下ろす。別れ際に“ある約束”を交わした二人は想いを伝えられないまま離れ離れに。 時が経ち現在。人生につまずいたジミーはあの日交わした約束を果たすためにアミの故郷を目指す旅に出る。“初恋の記憶”をたどる旅の果てに18年前には気付けなかったアミの想いを知り、止まっていたはずのジミーの時間が少しずつ動きだす。