戦争に翻弄される人々を描く、オフィスコットーネ『兵卒タナカ』今週末より
オフィスコットーネプロデュース『兵卒タナカ』が2月3日(土)より東京・吉祥寺シアターにて上演される。 オフィスコットーネ『兵卒タナカ』キャスト これまで、ドイツ軍占領下のフランスで、同じフランス人でありながら敵と味方に別れざるを得ない人々を描いたジャン=ポール・サルトルの『墓場なき死者』(2021年)、5人の息子を次々に戦争に奪われる母の物語であるカレル・チャペックの『母 MATKA』(2021年)と、戦争に翻弄される市井の人々を描く作品を上演してきたオフィスコットーネ。今回の『兵卒タナカ』は80年前にドイツの劇作家、ゲオルク・カイザーによって書かれた、当時の日本の軍国主義を痛烈に批判した作品だ。ドイツ人であるゲオルクの目から冷静に描き出されているのは、神格化された天皇が率いる軍隊と、そこに身を置いた人間の誇りが崩れるさま。 物語は兵卒タナカが戦友のワダを連れ、休暇で北国の貧しい農家である実家に帰ってくるところから始まる。大飢饉の真っ只中にありながら、酒や魚、タバコを用意して息子を出迎えるタナカ家。しかし、兵隊という仕事に誇りを持っていたタナカは、家族の犠牲によって自分の身分が成り立っている現実を知り、絶望して思いがけない行動をとる。 オフィスコットーネの代表である綿貫凛は昨年惜しまれながらこの世を去った。今作は、綿貫が書き遺した企画構想を元に上演される。演出を担当する文学座の五戸真理枝は「お会いしてからお別れするまで、とても短い時間でしたが、綿貫さんの胸に燃え盛っていた演劇への情熱を、今も強烈に思い出します。私たちは綿貫さんのメモの元に集結しました。戦争を止められない世界の中で、深い祈りを込めて、未来への希望を失わずに今を生きていくための『兵卒タナカ』を 立ち上げていきたいと思います」とコメントを寄せている。80年前に紡がれた物語でありながら、2024年の今こそ上演する必要のある今作。そこに込められた思いを噛み締めながら、この舞台を見届けたい。 文:釣木文恵 <公演情報> オフィスコットーネプロデュース 『兵卒タナカ』 作:ゲオルク・カイザー 翻訳:岩淵達治 演出:五戸真理枝(文学座) 企画:綿貫凜 出演:平埜生成 瀬戸さおり 朝倉伸二 かんのひとみ 渡邊りょう 土屋佑壱 名取幸政 村上佳 比嘉崇貴 須賀田敬右 澁谷凜音 永野百合子 宮島健 2024年2月3日(土)~2月14日(水) 会場:東京・吉祥寺シアター