『ラストマイル』で石原さとみら6年ぶりに再結集! 『アンナチュラル』が愛される理由とは
監督・塚原あゆ子×脚本・野木亜紀子の“再タッグ”に高まる期待
『アンナチュラル』の放送から6年、『MIU404』の放送からは4年。新しいものが次々と生まれてはものすごいスピードで消費されていく社会において、2つのドラマがこれほどまでに長く愛される理由はいくつもあるが、やはり特筆すべきは監督塚原と脚本の野木の相性の良さだろう。二転三転するスリリングでスピード感のある展開の中にいくつもの伏線を張り巡らせ、なおかつ、各登場人物の複雑な心情を紡ぐ野木。塚原はそれらを一つの取りこぼしもなく丁寧に拾い上げながらドラマチックに演出し、観る人の高揚感を高める。大胆さと繊細さが共存する2人の作品は毎話が完成されていて、観終わった後に心地の良い疲労感に襲われることが多い。 また、野木は社会問題をエンターテインメントに昇華させる力に長けた脚本家だ。『アンナチュラル』でも、『MIU404』でも、いじめやパワハラ、煽り運転、フェイクニュース、外国人労働者問題など、現代社会が抱える複数の問題にメスを入れ、観る人の年齢を問わない形でその実態を描き出した。『アンナチュラル』の最終回でミコトに「不幸な生い立ちなんて興味はないし、動機だってどうだっていい」と言わせる一方、『MIU404』では一貫してピタゴラ装置のように「誰と出会うか、出会わないか」で人生が変わってしまうということが示唆されるなど、反省的で、流動的で、あらゆる人の目線に立った一人ひとりのドラマに私たちは無関係ではいられなくなる。 加えて、米津玄師が手がけた主題歌にも言及せざるを得ない。『アンナチュラル』の主題歌「Lemon」の「夢ならばどれほどよかったでしょう」というフレーズを聞けば、長時間労働による過労で事故に遭い、アスファルトに寝そべって花火を見上げた佐野祐斗(坪倉由幸)を、『MIU404』の主題歌「感電」の「たった一瞬の このきらめきを」というフレーズを聞けば、銃で撃たれて重傷を負いながらも暴力団から持ち逃げした大金を女子児童慈善団体に寄付し、死の間際に満足そうな笑みを浮かべた青池透子(美村里江)を思い出す。主題歌が流れ出すタイミングもさることながら、物語との親和性が高く、いつまで経っても彼らの痛みが自分ごとのように胸に迫るのだ。 一人ひとりの人物造形も鮮やかで、大きなファンダムを生んだ両作品。魅力的なキャラクターを挙げればキリがないが、特に人気を集めたのが井浦演じる中堂だ。ぶっきらぼうで「クソが!」「バカが!」と周囲に悪態をつきまくる中堂だが、不器用なだけで本当は愛情深いというギャップが視聴者の心を掴んだ。今回の発表に際し、井浦は自身のXで「妙な事件が増えるせいで俺まで駆り出されるハメになっちまったじゃねぇか...あぁクソが!」と中堂になりきったコメントを投稿している。「クソが!」と言いながら、不条理な死と向き合う彼に再び会えると思ったら今から楽しみで仕方がない。 なお、『ラストマイル』では、事件の舞台となるショッピングサイトの関東センター長・エレナを満島、エレナに振り回されながらも事件解決に奔走する同センターのチームマネージャー・梨本孔を岡田が演じる。彼らと、UDIラボのメンバーとの絡みも見どころとなりそうだ。
苫とり子