まもなく発足する第二次トランプ政権! 日本の自動車産業は逆風を覚悟する必要アリ
トランプ次期大統領が与える自動車業界への影響とは?
「もしトラ」と呼ばれていたのが、遠い昔のようだ。2000年代後半に発行されたベストセラー「もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」が、「もしドラ」と呼ばれていた。そのパロディのように「もしトラ」と称されたのだ。 【写真】アメリカ→イタリア→アメリカという狂った生産工程! キャデラック・アランテとは つまり、民主党のバイデン政権が発足して4年後に、まさかトランプ氏が大統領に返り咲くとは、日本人の多くが予想しなかったといえる。 だが、アメリカの現実は、民主党と共和党が対立することで、世のなかが分断しているという空気が2020年代に入ってから際立つようになっていたのも、事実だ。 そんな「もしトラ」から「ほぼトラ」へと時が流れるなか、自動車産業界はトランプ第二次政権への対応を模索するようになった。 まずは、トランプ第一次政権で何が起こったかを復習したい。 トランプ大統領は当時、「バイ・アメリカン」を掲げて保護主義的な姿勢を取った。ただし、1980年代に日系メーカー各社がアメリカ現地生産を進めた際に巻き起こったような、生産現場近くで日本車に火をつけて威圧するような騒ぎには至っていない。 それよりも、アメリカに投資し、そしてアメリカ国内での雇用を促進する日系メーカーを排除するのではなく、上手くお金を落とさせるという戦略を取った。 一方で、連邦政府の影響力の強化を狙った。目立った動きとしては、実質的にカリフォルニア州がリードする形となっていた燃費規制について、EPA(米環境保護庁)による50州規制統一を図ろうとした。 その上で、燃費規制については、オバマ政権が掲げたCAFE(企業別平均燃費)についても、デトロイト3が主力モデルとする大型ガソリンエンジン車が不利になるような目標値を撤回するなどした。 そして、2024年の大統領選挙で勝利したトランプ氏は、第二次政権に向けた政権移行チームとともに、グローバル市場における自動車産業の状況において、アメリカが優位に立つための戦略を練っているところだ。 そうしたプロセスのなかで、トランプ氏はSNSを通じて、持論を展開している。たとえば、アメリカに隣接するメキシコやカナダとのNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しについて触れている。日系メーカーも、今後はNAFTAの活用方法の見直しを迫られるかっこうだ。 また、バイデン政権が導入したIRA(インフレ抑制法)については、廃止を含めた大きな変更が予想される。近年、IRAに振り回されてきた日系メーカー各社にとって、仕切り直しが必要になる可能性がある。 いずれにしても、トランプ第二次政権は、アメリカ第一を全面に押し出し、強硬な姿勢で日本産業界に対峙することは間違いないだろう。
桃田健史