輝きを失う金、トランプ氏勝利後のリスク選好高まりが逆風
(ブルームバーグ): 米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利後、株式や暗号資産(仮想通貨)ビットコインなど多くの資産が即座に活況を呈した。こうしたリスク選好の動きが先行する中で、金相場の好転にはしばらく時間がかかりそうだ。
ドイツ銀行によると、トランプ氏が返り咲きを決めた直後の2日間の金相場は、少なくとも過去13回の大統領選の中で最悪のパフォーマンスとなった。金は投開票日以降、足元まで7%近く下落しているが、ほかの一部資産クラスは選挙後の上昇傾向を維持している。
USバンク・ウェルス・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、ロブ・ハワース氏は、「投資家が金を本格的に選好するのは、他の資産が全て不調に陥った時だ」と指摘。「株式は順調で、低格付け企業のクレジットでさえも安定したリターンを生んでいる。このため、ポートフォリオの収益向上を目指して代替資産を追い求める意欲は薄れている」と説明した。
金相場は大統領選までの1年間の上昇率が30%余りに達していた。地政学的および経済的なリスクを背景に投資家の資金を引き付けて過去最高値の更新が続いていたが、足元の急落局面で転換点を迎えていることは明確だ。
トランプ氏自身が突発的な不確実要因になり得ると捉えられていることもあり、長期的には次期政権を巡る不透明感はくすぶっているものの、大統領選で最も金の強気シナリオになるはずだった両候補の接戦が回避されたことで、投資避難先としての魅力が大きく剝げ落ちる形となった。
大統領選後のドル高進行も、ドル建てで価格が設定される金の投資妙味低下につながっている。加えて、米経済はめざましく良好に推移しており、インフレの鈍化と米金融当局が利下げを急がない姿勢も相まって、金の逆風になりやすい。
それでも、長期的には依然として金の上昇余地が残っている可能性がある。トランプ次期大統領が掲げる強硬な税制および関税に関する公約は、最終的に財政赤字の拡大やインフレ高進を招きかねず、インフレヘッジとしての金への投資回帰を促し得る。