「この手は盗むためにあるんとちゃう」…更生に苦しむ出所者を励ました“職親” 薬物や売春に手を出したアヤにも手を伸べた…実話元に伊集院高演劇部が好演 全国総文祭、岐阜で開幕
全国高校総合文化祭の演劇部門は7月31日、岐阜県羽島市の不二羽島文化センターで始まった。鹿児島県代表で初出場の伊集院高校演劇部(21人)は、刑務所や少年院の出所者の社会復帰を支える実話を題材にした「仕事のお父ちゃん」を披露。親代わりとなって寄り添う経営者を熱演し、「偏見のない社会を」と訴えた。 【写真】〈関連〉会場に駆けつけた相澤裕之さん(右)と談笑する上田美和教諭=7月31日、岐阜県羽島市の不二羽島文化センター
物語は、お好み焼き全国チェーン「千房」(大阪市)の中井政嗣会長(78)が、出所者を採用して更生支援に取り組む「職親プロジェクト」を描いた。中井会長がモデルの主人公・政次が、薬物や売春に手を出し少年院に入った少女アヤに語りかけながら、出所者と一緒に汗を流した日々を振り返る形で進む。 政次が、盗みを繰り返す社員と取っ組み合う場面では、息を切らしながら「この手は盗むためにあるんとちゃう。お好み焼きを焼け」と一喝。過去の罪に苦しむ出所者を立ち直らせるため、時には裏切られながらも辛抱強く向き合う“仕事のお父ちゃん”の葛藤を表現した。 最後の場面では、少年院を出て、社会に戻ることへ不安を抱くアヤに「二度と同じ道に進んだらあかん。こっちにおいで」と手を差し伸べる。政次を演じた3年、上江聖さんは「心がぶつかり合うことで生まれた絆の大切さが伝わっていたら」。 演劇部顧問の上田美和教諭(52)が脚本を手がけた。前任の屋久島高校で、生徒が千房に就職したことが縁で、職親プロジェクトに携わってきた相澤裕之専務取締役(62)と知り合った。
昨夏には中井会長と面会。出所者の居場所をつくり、再犯率低下や犯罪被害者減に貢献しようとする信念に感銘を受けた。「観客の心に訴える劇をつくって、多くの人に活動を知ってほしい」と書き下ろした。 本番で、部員らは実際に千房で使われている制服に身を包み出演。練習を重ねた関西弁も披露した。 仕事が入った中井会長に代わり、相澤専務が駆けつけ、舞台を観覧。「出所者たちと過ごした日々がよみがえってきた。思いを伝えてくれた生徒に感謝したい」とねぎらった。 ◇ 文化部のインターハイとも呼ばれる第48回全国高校総合文化祭「清流の国ぎふ総文2024」が31日、岐阜県で開幕した。全国から集まった生徒約2万人が、15市町を会場に、演劇や合唱など22部門で成果を披露する。鹿児島県は16部門に約200人が参加する。8月5日まで。 岐阜市の長良川国際会議場であった総合開会式では、岐阜県内や海外の高校生が郡上踊などを披露した。古田肇知事が「文化部活動への愛を深め、全国や世界の仲間とつながる大会となることを期待します」とあいさつした。
47都道府県の代表が1人ずつ決意表明。鹿児島代表の国分高校2年、假屋こずえさんは「かける思いは桜島のように燃えています」と宣言し、前年度開催県代表として高文連旗を、岐阜の生徒実行委員長に手渡した。
南日本新聞 | 鹿児島
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