飲酒運転で事故起こし同乗者死亡…現場から逃走しても運転手は「実刑になるかギリギリのライン」の理由とは
飲酒運転“同乗者”は死傷しても「賠償額の減額」免れない
冒頭の佐賀県唐津市で起きた事故について、伊藤弁護士は「同乗者にも問題がある」と指摘する。 「飲酒運転の車に乗り亡くなった同乗者は、事故に巻き込まれた『被害者』であることは確かです。しかし同時に、法律上は、運転手の飲酒を知りながら同乗した人もまた、道路交通法に違反した者として扱われることになります」 運転手が「酒気帯び」だった場合、同乗者には2年以下の懲役または30万円以下の罰金が、「酒酔い」だった場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになる。 さらに、同乗者自身が道路交通法に違反していることから、たとえ死傷したとしても慰謝料や損害賠償の額は「過失相殺」がなされる可能性が高いという。 「今回の事故の詳細はわかりませんが、裁判でも通常『同乗者が(運転手の飲酒について)知らなかったとは考えにくい』と判断されるのではないでしょうか。そうなれば“過失相殺”事由と見なされ、慰謝料や賠償額の減額も免れないでしょう。 また今回のようなケースでは、亡くなった同乗者にも責任があったとして、運転手への刑事裁判の判決が執行猶予付きに傾く可能性も十分に考えられると思います」(伊藤弁護士)
交通事故の量刑「悪質でも軽い」
伊藤弁護士は「交通事故の被害者支援をしている私の感覚ではありますが」としつつ、罪を重ねるような“悪質な事故態様”であっても「運転手に対する量刑は軽い」と話す。 「今回のケースも、飲酒運転だけで十分に危険な行為ですが、それに加え同乗者の救護を行わずに逃走していますから、一般的な感覚としては『実刑が出るだろう』と思われる方が多いように思います。 ですが、ただでさえ軽い量刑になりがちな交通事故裁判で、同乗者にも違反がある。具体的な飲酒の程度などの情報が分かりませんので確たる予想はできませんし、実刑判決の可能性も十分に考えられるとは思いますが、私自身の過去の経験を踏まえると、冒頭に述べたように、実際には実刑と執行猶予付き判決のボーダーライン上のケースと考えられるように思います。 個人的には、刑事裁判では、同乗者に違反がある場合でも、そのことが運転手の違反の悪質性を軽く見る理由になっているのかは疑問に思いますし、運転手の悪質性を直視した上で判決を出してほしいと思います」
弁護士JP編集部