アングル:トランプ財政政策に「債券自警団」再来か、4.5%が警戒ライン
Davide Barbuscia Lewis Krauskopf [ニューヨーク 8日 ロイター] - 米国債市場では大統領選にかけて上昇していた利回りが低下に転じるとの期待が後退している。当選確実となったトランプ氏の経済政策が財政拡張的で景気を押し上げる一方でインフレを加速させることが予想され、始まったばかりの米連邦準備理事会(FRB)の利下げがペースダウンする恐れがあるためだ。放漫財政を戒める「債券自警団」が現れるとの声もある。 米国債利回りは、トランプ氏勝利観測の高まりとともに9月中旬から70ベーシスポイント(bp)以上上昇した。 BofAグローバル・リサーチは最近、国債利回りの短期目標を3.5─4.25%から4.25─4.75%に引き上げた。 トランプ氏の共和党が議会両院で多数派となり、いわゆる「トリプル・レッド」となれば、トランプ氏の政策が実現しやすくなる。 RBCグローバル・アセット・マネジメントのブルーベイ米債券部門責任者、アンジェイ・スキバ氏は、長期債のさらなる売り(利回り上昇)を想定。「われわれが想定する程度の関税が導入されれば、利下げの障害になる」と述べた。 米国の元議員ら超党派で構成する「責任ある連邦予算委員会」の推計によると、トランプ氏が掲げる財政政策は今後10年間で債務を7兆7500億ドル増やす可能性がある。 第2次トランプ政権での財政状況を懸念し、長期金利のさらなる上昇を予想するダブルラインのポートフォリオマネジャー、ビル・キャンベル氏は、「トリプル・レッドは事態を複雑にする」と語った。 <4.5%が警戒ライン> これまでのところ国債利回り上昇の影響は、株式市場にほとんどみられない。選挙という不確実性が払拭され、株式市場は上昇し、S&P総合500種指数は最高値を更新している。 ただ、利回りの大幅上昇は株式の魅力を弱める。エドワード・ジョーンズのシニア投資ストラテジスト、アンジェロ・クルカファス氏によると、過去1年、10年債利回りが4.5%に接近あるいは4.5%を超える局面で株式市場の調整が起こっている。「(4.5%は)人々が注目している水準と考えられる」と述べた。7日終盤の10年債利回りは4.34%だった。 <米政策金利予想切り上げ> 9月に利下げを開始したFRBは、大統領選挙の2日後となる7日に0.25%利下げを決定した。 ヌビーンの債券戦略責任者、トニー・ロドリゲス氏は、選挙の主な影響として「今後の利下げペースが緩やかになる」と指摘し、「2025年の利下げは従来の想定よりも少なく、間隔が空くとみている」と述べた。 FF金利先物によると、4.5─4.75%の誘導目標の来年末の水準は約3.7%。9月時点から1%切り上がった。 パウエルFRB議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、次期政権が金融政策に与える影響について具体的な発言を控えた。利回りの上昇はインフレ期待の上昇でなく経済見通しの改善を反映しているとの見解を示した。 しかし米国債と物価連動国債(TIPS)の利回り差で測定されるインフレ期待は今週急上昇し、6日は6カ月ぶり高水準の2.4%に達した。 債券運用大手PIMCOのグループ最高投資責任者(CIO)、ダン・アイバシン氏は、インフレ再燃によるFRBの利下げ減速ないし一時停止を懸念し「市場にとって短期的に良くない展開は、インフレが再加速し始めることだ」と述べた。 ブラックロックのグローバル債券部門CIO、リック・リーダー氏は7日、25年の積極利下げを想定するのは「行き過ぎ」だと指摘した。