ミキハウス・松尾龍乃 中軸として期待される入社3年目「得点圏にこだわって、チャンスで打ちたい」
さらなる飛躍を遂げようとしている。ミキハウス・松尾龍乃(りゅうだい)内野手(24)は今季が入社3年目。4番も含めた中軸としての活躍が期待される中、左の強打者は言葉の端々に揺るがぬ決意をにじませた。 「チームの主力というか、ミキハウスと言えば松尾という名前が出てくるぐらいの選手になれるように。今季は得点圏打率にこだわっていきたい。チャンスで打てれば自ずと率も残せますし、得点も入って勝ちにつながっていくと思うので」 一躍、脚光を浴びたのは昨秋の日本選手権1回戦・ENEOS戦だった。0―0で迎えた2回1死。カウント2―1からの内寄りチェンジアップを捉えると、右翼席中段へ飛び込む先制ソロ本塁打となった。「真っすぐに準備していて、浮いた変化球を打てた。トップを残して対応できたのが良かったと思います」。名門撃破につながる決勝打は、理想のスイングの賜物だった。 ただ、晴舞台で5番を任されるまでの道のりは長く、険しかった。入社1年目の23年シーズン。野球人生で初めて味わう大スランプに陥り、年間成績は51打数5安打の打率・098に終わった。 「守備も走塁も自信がない中、唯一の取り柄だったバッティングもダメで、自分は長所が一つもない野球選手だな、と。実力のなさを痛感しました」 福岡大4年春には九州六大学野球で3冠王を獲得。確かな実績を手に社会人野球の門を叩いたが、現実は甘くなかった。自信やプライドの類いは粉々に砕け散る。悔し涙を流した日もあったが、そのたびに両親をはじめとする家族、故郷の友人たちのことを思い浮かべ、心を奮い立たせた。 「地元が山口で、大学は福岡。就職でこちらへ出てきて、2年ぐらいで地元へ帰るのは恥ずかしいし、辞めたくもないし。それなりに応援されてこっちへ来たんで、情けない姿で帰るわけにはいかない、と」 昨年11月の新チーム結成からは、さらに練習量を増やした。「チームの中で一番スイングすることを決めました」。両手の手のひらはマメがつぶれ、皮がめくれるなど左右ともボロボロ。バットを握るときはもちろん、入浴する度に激痛に耐えながら、それでも、来る日も来る日もバットを振り続けた。藤田知晃野手コーチをはじめ、周囲もサポート。二人三脚での内野ノックも日課に加わった。豊富なスイング量に加え、ノックで下半身が強化されたことが奏功する。下半身主導のスイングが自然と身につき、2年目の年間打率は151打数44安打の・291まで上昇。目覚ましい成長を遂げた。 「スイングとトレーニングは1年間通じてやることができたので、そこは変わらずやっていきたいと思います」 バットを振り込む日常に変わりはないが、手のひらからマメは消えたという。「いかに手の力だけで振っていたのかということも分かりました」。打者としての確かな進歩を携え、まずはチームを5年連続の都市対抗出場へと導く。