スプリットでもシンカーでもチェンジアップでもない?今永昇太がトライ&エラーの末に編み出した新球種「三本指の速球」<SLUGGER>
それはMLB1年目での2ケタ勝利の達成である。なぜなら、それは過去に9人しか達成したことのない記録であり、そのリストには1995年の野茂英雄(13勝)、2002年の石井一久(14勝)、07年の松坂大輔(15勝)、10年の高橋尚成(10勝)、12年のダルビッシュ有(16勝)、14年の田中将大(13勝)、16年の前田健太(16勝)、23年の千賀(12勝)と、そうそうたる面々が名を連ねているからだ。 「そこは本当、まったく意識してなくて」と今永。 先発投手の勝利数は、打線の援護や救援投手の安定した活躍がなければ残らない数字なので、MLBでは需要視されていない。わずか10勝でも最優秀投手賞=サイ・ヤング賞を獲得できる時代であり、今永もそれを十分に理解しているようだった。 「日本時代からフォーカスしていたのは、自分が投げた試合でチームがどうか。自分が何勝何敗というより、自分が投げた試合でチームが何勝何敗かというのが一番大事。自分に負けがつかなくてもチームが負けている時はありますし、とくに自分につく勝利とかというのは、まったく気にしていないです」 気にしていない、と言えば、冒頭に書いたWBCのマウンドに再び立つことも、そうかも知れない。次回大会(26年)への出場の可能性を問うと、彼はこう答えている。 「その時に肩、肘が健康で、(代表に)呼んでもらえるような選手でありたいなとは思いますね」 2年後の春、彼が再び、背番号「21」を背負って決勝戦のマウンドに立っていたのなら、それは彼が今、メジャーリーグの日常に立ち向かいながら、「三本指の速球=ホップ成分の少ない速球」を見つけ、実戦で磨き上げた先にある、明るい未来なのかも知れない――。 文●ナガオ勝司 【著者プロフィール】 シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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