広島市西区の市道陥没事故の原因は 専門家、東京外環道地下トンネル工事との類似点指摘も
広島市西区福島町での市道陥没事故は、2020年10月に東京都調布市で起きた地下トンネル工事による陥没などの事故との類似点を工法や地質の面から専門家が指摘する。ただ、広島市は「原因究明の最中」として詳しい情報を明らかにせず、現時点では不明な部分も多い。信頼回復や工事再開に向けては積極的な情報開示が不可欠だ。 指導陥没事故の現場 類似点がある東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネル工事は、地下40メートルより深い部分を大型掘削機(シールドマシン)で掘り進めていた。その際に陥没や空洞が複数箇所で見つかった。 事故原因を調べた有識者委員会は、夜間の工事中断後にマシンのカッターが再び回転しやすくなるように業者が地中に気泡材を注入したところ、カッター前方の掘削断面が緩み、土砂が落ち込んだと推定した。 委員長の小泉淳・早稲田大名誉教授(都市トンネル工学)は、地下約30メートルを掘る広島の工事が外環道と同じ工法を採用し、掘削地盤も砂れき層など類似している点に注目する。気泡材を使っていた場合は「外環道のトラブルによく似た状況と思われる」と話す。 気泡材を使っていたかどうかについて、広島市は中国新聞の取材に「原因究明の最中であり、明らかにできない」と説明する。 また小泉氏は、外環道の事故とは異なる点として異常な出水を挙げる。掘削した土砂を取り込むスクリューコンベヤーと呼ばれる装置からトンネル内へ土や水が一気に入り込み、地盤の緩みが急速に広がった可能性があるとした。 外環道の事故現場の周辺では今も工事が止まっている。小泉氏は「行政と業者、住民の信頼関係ができて初めて工事再開に向かう。市は積極的に情報公開し、工事の進め方について住民に納得してもらうことが重要だ」とした。
中国新聞社