意味ない?米軍展開 「移民キャラバン」入国阻止は中間選挙で追い風となるか
アメリカで6日に投票が行われる中間選挙を前に、米国内では候補者の有権者に対するアピールが終盤を迎えている。米連邦議会下院の全議席(定数435)と上院の35議席(上院全体では100議席)、そして39州で知事のポストをめぐって、候補者や政党の間で激しい戦いが繰り広げられている。連邦議会は上下両院とも、共和党議員が過半数を占めているが、今回の中間選挙の結果次第では、その勢力図が大きく変わる可能性もあり、トランプ政権の政策に影響が出るのは必至だ。共和党の勝利を是が非でも必要とするトランプ大統領は、選挙の争点となっている移民問題を連日ソーシャルメディアで取り上げ、特定の地域からやってくる移民(不法入国者も含む)が社会に与えるダメージについて言及している。このタイミングで、中米では難民としてアメリカに入国を希望する市民らが、アメリカを目指して徒歩で現在も移動している。トランプ大統領は彼らの入国を阻止するために、国境地域に大規模な米軍部隊を展開させる案を明らかにしている。 【写真】SNSで“部族化”した?現代アメリカ 中間選挙前にヘイトクライム続発
アメリカへ向かい歩き続ける「移民キャラバン」
中米のホンジュラスは人口900万人ほどの国だが、凶悪犯罪の発生率が他国よりも際立って高いことでも知られており、人口10万人あたりの殺人事件発生数は約56件。この割合を超える国はホンジュラスの隣国であるエルサルバドルしかなく、アメリカの約10倍、日本の約200倍の確率で殺人事件の被害者になる可能性がある。東京都はホンジュラスよりも若干人口が多いが、都内で年間5000件以上の殺人事件が発生することなど想像することすら困難だ。
貧困や暴力から抜け出そうとした市民数百人が先月中旬、数百人のグループでホンジュラス中部のサン・ペドロ・スーラを出発し、徒歩でアメリカに向かい始めた。彼らはアメリカに難民として受け入れてもらうことを望んでおり、グアテマラを抜けて現在はメキシコ国内を移動中だ。徒歩で移動する彼らの姿はメディアでも大々的に報じられ、ホンジュラスやグアテマラでは彼らに合流する難民申請者が急増。ピーク時には約7000人が徒歩でアメリカを目指していたが、現在は5000人弱と見られている。現在も徒歩でアメリカを目指すこの集団は「移民キャラバン」という名前で呼ばれるようになった。 アメリカを目指す移民キャラバンは、数年前に中東からの難民が徒歩で西ヨーロッパを目指した姿を彷彿とさせるが、トランプ大統領はさっそく「移民キャラバンの中には犯罪者やテロリストが紛れ込んでいる可能性が高い」と主張。中間選挙を前に、自身の支持者や共和党支持者に対して、いつものレトリックを用いて、難民や不法移民に厳しい姿勢をアピールした。 移民キャラバンとしてアメリカに向かう人々は、他の難民申請者同様、合法的なプロセスで難民申請を行う予定だが、トランプ大統領は移民キャラバン対策に最大で1万5000人の米軍兵士を国境に展開させる考えを明らかにした。不法入国者の取り締まりには、現在も2000人程度の州兵が動員されているが、国防総省は1日になって約5000人の米軍兵士を国境付近に展開させたと発表している。すでにテキサス州の国境周辺の町では、国境付近に有刺鉄線を仕掛ける兵士の姿が地元メディアによって報じられており、米軍部隊はカリフォルニア州やアリゾナ州の国境地帯にも投入される模様だ。