【特集|柏崎刈羽原発 この1年】再稼働へ動く政府と東電・・・花角知事は?政権幹部「知事の考えがつかめない」【新潟】
柏崎刈羽原発で事実上の『運転禁止命令が解除』されてから、まもなく1年がたちます。今後の電力需要の急増を理由に再稼働を目指す政府と東京電力に対し〝地元の同意〟のカギを握る花角知事はどう対応してきたのか。今後の展望も含めて探りました。 【動画】【特集|柏崎刈羽原発 この1年】再稼働へ動く政府と東電・・・花角知事は?政権幹部「知事の考えがつかめない」【新潟】 政府が動き出したのは、能登半島地震から3カ月後でした。 資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が、県庁を訪問。知事に直接再稼働を訴えました。 ■資源エネルギー庁 村瀬佳史長官 「東日本全体の電力需給構造の強靭化に向けて、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が非常に重要。」 ■花角英世知事 「県民がどういうふうにこの問題を受け止めているか、それを丁寧に見極めてまいりたい。」 花角知事は明言を避けましたが、政府・東電の動きは矢継ぎ早でした。 4月、地元の同意がないなか、7号機に核燃料を装填。9月には、7号機にたまった使用済み核燃料を3号機に移す作業を開始。さらに9月末には、4号機から69体の使用済み核燃料を青森県むつ市の中間貯蔵施設へ運び出しました。原発の外へ搬出したのは、12年ぶりでした。いずれも満杯近い貯蔵率を下げるためで、再稼働にあたり柏崎市の桜井雅浩市長が求めていたものでした。 9月、岸田政権は柏崎刈羽原発をテーマに閣僚会議を初めて開催。 ■岸田文雄総理(当時) 「柏崎刈羽原発の再稼働の重要性は高まっている。」 県が求めていた原発事故時の避難路整備を、全額国の負担で実施すると表明しました。ただ、この時点で、岸田総理は退陣を表明していました。政府関係者は、候補者が乱立する総裁選を見据え、経済産業省主導による駆け込み開催だったと明かします。 ■政府関係者 「次の総理が誰になっても、柏崎刈羽を引き継いでもらうため。『ピン止め』のためだった。」 政府が原発にこだわる背景には、経産省が描く日本のエネルギー戦略があります。今後の経済成長を左右するのは、原発をはじめとする「脱炭素電源」だと主張。現在、国内発電量に占める原発の割合は福島第一原発事故前の半分以下に過ぎないため、再稼働を目指しているのです。 混戦を制して誕生した石破政権。所信表明で、さっそく原発に言及しました。 ■石破茂総理 「安全を大前提とした原子力発電の利活用。日本経済をエネルギー制約から守り抜きます。」 一方の花角知事。 繰り返してきたのは、「県民の意思を見極める」という言葉です。 ■花角英世知事 「県民の受け止め、考え方、意見というものを捕まえようと思っています。」 議論の材料として、現在3つの会議を動かしています。 1:東電の安全対策などを評価する『技術委員会』 2:能登半島地震を受けて屋内退避のあり方を議論する『防災検討会』 3:避難路の整備方針を具体化する『国と県の協議の場』 加えて、11月には「原発事故時の被ばくシミュレーション」を実施すると表明しました。 次々と繰り出す花角知事の一手に、政府からは困惑の声が。再稼働を容認した柏崎市の桜井市長も・・・ ■柏崎市 桜井雅浩市長 「う~ん、今さら。私はもう判断されるべきだろうと思う。」 花角知事に対し、政府与党や経済界の間では〝経済的メリット〟という言葉が広がりました。 5月、県内を訪れた元デジタル担当大臣の平井卓也・自民党広報本部長は、ぶち上げました。 ■自民党 平井卓也広報本部長 「今後、データセンターやその周辺の産業クラスター(集積地)を地域で作るべきではないかと、新潟もその有力な候補だと思います。」 続く7月には、県議会最大会派の自民党県議団が国への要望で次のように記しました。 『国・事業者・商工団体は、本県が経済的なメリットを感じられるような取り組みを実施すること』 県内の経済団体も同調しました。 10月には、新潟経済同友会が『恩恵を受けられる仕組み』を緊急提言。県商工会議所連合会も『メリットを享受して発展できる仕組み』を相次いで求めました。 11月には、柏崎刈羽原発を視察した財界トップから・・・ ■経団連 十倉雅和会長 「早期に再稼働できることを大いに期待している。経済界としても、地域の経済活性化にどのように関与していけるか考えていきたい。」 同行した大企業幹部も、柏崎刈羽原発を『首都圏を支える電源』と位置づけ、再稼働に期待を寄せました。要望を受けた東電トップは、地元への還元に言及しました。 ■東京電力 小早川智明社長 「地元の皆様に支えていただいている有形無形の御恩に対しては、しっかりと応えていく必要がある。」 『経済的メリット』は、政府も考えています。 現在、大詰めを迎えている『エネルギー基本計画』の改定議論では、AIやデータセンターなどの産業を原発をはじめとした脱炭素電源の立地地域に誘致する議論があります。花角知事も反応しました。 ■花角英世知事 「経済的な利益については、再稼働に関する議論の材料の一つになると考えている。」 少しずつ出そろう論点。花角知事は知事選に初挑戦したとき、こう語っていました。 ■花角英世知事 「リーダーとして船長として答えを出し、それを皆さんの信を問う、それも考えています。その覚悟があります。」 議論の材料が2025年春にも出そろう見通しの中、のしかかる6年前の約束。 いつ再稼働の判断を下し、どんな形で県民に問うのでしょうか。今、分かっているのは、花角知事は公聴会を開催したうえで同意を判断する意向ということです。しかし、判断の時期やその後の信を問う手法は明らかにしていません。信を問う手法については現在、市民団体が県民投票に向けた署名集めを始めていますが・・・。 ■花角英世知事 「普通は『信を問う』と言えば『存在をかける』ニュアンスになるんじゃないか。」 知事選挙を強く匂わせますが、知事の任期は再来年の2026年6月。任期満了の場合、投開票まで期間が空くのがネックです。任期途中で辞職する『出直し知事選』も選択肢ですが、再稼働に焦点があたるため自民党内に反対論が根強くあります。 11月末、東電は7号機に続き、6号機の核燃料も装填する計画を原子力規制庁に申請しました。 ■柄沢正三県議 「なぜ、公に抗議文の一つも出さないのか。」 ■県の担当者 「県民の関心から言っても反応から言っても、どうなのかというところはかなり強めに苦言を呈した。」 政府と東電が外堀を埋めていったかに映るこの1年ですが、政権幹部はUXの取材に「知事の考えがつかめない」といいます。 ■政権幹部 「今、主導権を握っているのは花角知事だ。再稼働へ丁寧に進めるしかない。」 そして17日、国が示した『エネルギー基本計画』の改定案。 原子力について原発事故以降、盛り込んできた『可能な限り依存度を低減する』とも文言を削除し、再生可能エネルギーとともに最大限活用する方針を明記しました。 『国策』と県民感情のはざまに立つ花角知事。今年最後の県議会でも、いつもの言い回しに終始しました。 ■花角英世知事 「県民の意思がどう固まるのか、見極めていきたい。そのうえで判断・結論を出して、県民の意思を確認することを考えている。」