再び貝がよく採れる海に 三重・明和町大淀の漁師ら14人 海底耕運で環境改善
藻が繁殖漁に支障 組織立ち上げ自ら作業始める
国の補助を活用した地元漁師たちによる漁場整備が三重県多気郡明和町大淀で始まった。大淀地区の漁師で構成する大淀地区浅場保全活動組織(西村元裕代表、14人)は25日午前6時から、大淀海岸の沖合で、鉄製の大きなくわを漁船で引いて海底を耕し、貝が育ちやすい環境をつくる「海底耕運」を始めた。ノリ養殖が始まる10月上旬ごろまで、漁が休みの日を使って行われる。
大淀沿岸は、海底が広大な砂地となっており、ノリ養殖や底引き網漁、採貝漁業などが漁業の中心となっている。アサリが採れなくなった一方で、現在ではバイ貝やバカ貝(アオヤギ)漁が行われている。しかし、ここ2、3年でバカ貝の漁獲も減少。海底に藻が大量に繁殖した影響で、底引き網漁ができる範囲が狭くなってしまう他、バイ貝の籠漁などに支障が出ていた。 この状況を鑑み、「地元の漁師たちの手で海底にたまったヘドロなどを耕して土壌に空気を含ませて、貝などがすみやすい環境をつくることができれば」と、西村代表(56)が中心となって大淀地区浅場保全活動組織を立ち上げ、水産庁の「水産多面的機能発揮対策事業」を申請。このほど採択された。西村代表によると、20年以上前に県が沖合を耕したことがあったが、自分たちでやるのは初めてだという。 同活動組織は西村代表ら14人と漁船13隻で構成。ノリ養殖が始まる10月上旬ごろまでの間、漁が休みの火曜と土曜日を使い午前6時~正午に行う予定。期間中、1隻当たり6回程度、作業を行うという。 同事業では▶耕運▶機能低下を招く生物などの除去▶浮遊・堆積物の除去▶モニタリング――を補助対象としている。対象面積160ヘクタールを今年度と来年度で80ヘクタールずつ実施する。また、実施後は二枚貝など対象生物の沈着や個体数などのモニタリングを行うことになっている。本年度分の交付金額は239万6千円で、70%が国、残り30%ずつを県と町が負担する。 この日は、午前6時から7隻が沖合で鉄くわに網が付いた〝まぐわ〟を海底に沈め、けん引しながら海底のヘドロなどをかき混ぜた。 海底にくわの歯が掛かったことを確かめると、約1キロほどゆっくり船を進めながら引いては上げを繰り返し、7隻の船がまんべんなく海底を耕していった。 初日の作業を終え西村代表は「自分たちの漁場の環境が改善し、貝などの漁獲の向上や地元漁師たちが漁をしやすい環境を整備するためにも、この取り組みを継続して実施していきたい」と話した。