ダム構造物トンネルで日本酒熟成 岐阜と愛知、蔵元13社タッグ
岐阜、愛知両県の酒造会社13社は、両県にまたがる矢作ダムなど地元の四つのダム構造物内にあるトンネルで日本酒を貯蔵、熟成させる取り組みを進めている。プロジェクト実行委員長を務める岩村醸造(岐阜県恵那市)の渡会充晃社長は「“ダム酒”をきっかけに日本酒に興味を持ってもらい、新たなファンを掘り起こしたい」と期待を込める。(共同通信=斉藤泰子) 日本酒は1年で熟成するが、長期貯蔵により味がまろやかになるタイプもある。熟成中は温度変化と紫外線の影響を受けやすい。ダムで水をせき止める堤体内のトンネルなどは光が入らず年間を通じて15度程度を保ち、熟成に適した環境だ。冷蔵倉庫での熟成と比べ電力や設備投資のコストが節約できるメリットも。 矢作ダムの他、丸山ダム(岐阜県八百津町など)と阿木川ダム(同県恵那市)、小里川ダム(同市など)が参加。施設を有効活用しながら地域に貢献できるとして、貯蔵場所を無償で提供している。
プロジェクトを後援する名古屋国税局などによると、ダムで貯蔵した酒の商品化は広がりつつあるものの、酒造会社への聞き取りでは、認知度の低さが課題と判明。ダム貯蔵により付加価値を高めた商品を知ってもらいたいとの思いから、有料で試飲できるPRイベントを始めた。 昨年5月、名古屋市で貯蔵前の酒を味わうイベントを開いた後、13社はそれぞれ四合瓶(720ミリリットル)120本をダム堤体内の点検用通路などに保管。今年10月中旬の同市の試飲イベントでは、約1年間寝かせた酒に来場者が舌鼓を打った。同市緑区の自営業大河内正敏さん(60)は1年前を振り返り「(今年は)まろやかな印象。銘柄によって熟成の度合いが異なる」と顔をほころばせた。 渡会社長によると、各社は4~5年の熟成を想定した本数を貯蔵しており、毎年少しずつ蔵出ししていく予定だ。「今後もイベントを続けて、1年ごとに味の変化を楽しんでもらえたら」と話した。