ゴミの中に生きる人間は、そこから這い出すのは難しい ハイチのスラムで
人間の数が増えれば、吐き出されるゴミが増えるのは当然のこと。 世界最大級のゴミ処理場である上海の老港やナイジェリアのオルソスンなどの廃棄場には、一日1万トン以上ものゴミが運び込まれる。アメリカでは、平均すると国民は1か月に自分の体重とほぼ同じ量のゴミを出すという。体重80キロの人なら、月に80キロもの不要物を捨てるわけだから、国全体では大変な量になる。それでもリサイクルなどによって、うまく処理されていれば大きな問題にはならないだろう。しかし途上国では多くの人々がゴミに埋もれて暮しているのが現状だ。 陽が傾き始めた頃、シテ・ソレイユを訪れた。ハイチの首都ポルトープランスにあるこの貧民街の人口は30万以上。東京の目黒区や北海道の函館市の人口は20万台だから、その規模はもう立派な「都市」である。 しかし西半球の最貧国であるハイチのスラムに、それだけの人口を支えるインフラがあるはずもない。密集した掘っ建て小屋の目と鼻の先まで、溢れ出したゴミが悪臭を放つ。ふと目をやると、男の子がゴミのなかにしゃがみこんでいた。尻を出して、大用を足しているのだが、途上国では珍しくない光景だ。 後先のことを考えずに子供を産むから、スラムには子供が多い。その子供たちが成長しても貧困から抜け出せずに結局また子供を増やすことになる。ゴミの中に生きる人間が、そこから這い出していくことは難しい。 (2007年5月撮影) ※この記事はTHE PAGEの写真家・高橋邦典氏による連載「フォトジャーナル<人口増加の脅威>」の一部を抜粋したものです。