PURIKURA MIND・石ツ瞭斗インタビュー「もっとエンタメをやらなくちゃいけないと思ってます」
――なるほど。「丁寧な暮らし」は曲名と真逆のラフなロックンロール。 “丁寧な暮らし”って言葉が流行ったことがあったじゃないですか。モーニングルーティーンがあって、仕事に行って、帰ってきたらしっかり洗濯と掃除をして、体に良くて美味しいごはんを食べて、Netflixで好きな映画を見ながらリラックスする、みたいな。僕はもちろんそういう人間ではないので、“丁寧な暮らし”という言葉を聞くのが苦しかったんです。だったらそれを皮肉ってやろうと思って作ったのが「丁寧な暮らし」ですね。まったく真逆の生活を歌ってるっていう(笑)。この曲に対して「不幸ブランディングしてる」みたいな意見があったんですけど、別にブランディングしてるわけではなくて、不幸なときは不幸と書くし、幸せなときはそれを歌うのがリアルだと思ってるんですよ。 ――その感覚は「週刊少年ヘルプレス」にも通じてるかも。〈どうせ、大した事にはね/成れないままに死んじゃうから〉という本音をぶちまけていて。 「Helpless」という青山真治監督の映画があって。“北九州サーガ”の第1作なんですけど、本当に救いがない映画なんです。ウチのギター(喜多村勇也)も北九州出身で、“バンドで成り上がりたい”みたいな感じで上京してきて。ドラムの川島(攻)もベースの高橋(遼真)も、たぶんすごい夢を持ってバンドをやろうとしているし、めっちゃ覚悟を持って踏み出していると思うんですね。希望があるからそれが出来たと思うんだけど、「そんなの全部ありえないぞ」ってちゃんと言っておきたくて。自分もそうで、バンドをやったり歌うことに意味なんかないし、上手くいかないってわかってるけど、それでも1%の可能性を掴むためにやってるんだぞっていう。 ――でも、「諦めたい夜」では微かな希望も歌ってますよね。 じつはこの曲、前にやってたバンドのときに書いた曲で。当時はバンドをやってるのがきつくて、もう全部捨てたい気持ちになってて。でも、PURIKURA MINDを組んだ後「そしたらまた/明日の朝に会おう」という歌詞が書けた。それってたぶん、僕が初めて書いたポジティブな歌詞なんです。「それでもやりたい」ということを言えた曲になったし、だったらこのバンドで録りたいなと。まあ結局、今も大して変わってないんですけどね(笑)。バンドやってて得なことってあまりないし、親も心配するし。 地元の友達はちゃんと就職してるのに、僕は東京でフリーターやりながらバンドをやって。100人、200人集めるくらいは頑張ればやれるだろうけど、その先は才能や他と違う発想がないと上にいけないんですよ。バンドやっててよかったとか、まだ思ったことないですね。 ――最後の「漫画」については? 地元の友達で”両親が漫画家”ってヤツがいて。兄貴も絵が上手いんだけど、そいつは本当にダメで、何もしないんですよ。仕事もしてないし、借金だらけだし、友達も少ない。でも、そいつがいてくれることで僕は誇れない自分を守れる感じがあるんです。なので〈貴方に一人きりで居て欲しいよ〉って歌ってるっていう、めっちゃ最低な歌で(笑)。 ――何もしてないダメなお前を見て安心したいから、ダメなままでいてほしいっていう……確かにひどい(笑)。 お客さんに対しても同じようなことを思ってるんですよね。めちゃくちゃ自分を誇れる人は、PURIKURA MINDの曲を聴かない気がしてるので……。「漫画」は僕らのことを理解しようとしてくれる人に〈そのままでいてくれ〉と言ってる歌でもあるんですよね。 ――3月にはEP「Starter Kid’s」のリリースツアーが大阪、東京で開催されます。 前回の自主企画は2曲しか出してない状態だったので、お客さんは予習もできなかったんですよ。ライブで初めて聴く曲が多くて、それはそれでよかったと思うんですけど、今回はEPが出た後のツアーなので、ライブに来る価値を確かめたいと気持ちがあって。今ってたぶん、現場主義みたいなものの価値がどんどん薄れてると思うんです。ただ、僕らはそこにも抗いたくて。それもロマン主義みたいなものなんですけど、僕は平成11年生まれなんですけど、令和になっても平成のモラトリアム感を続けたくて。 ――なるほど、それが”PURIKURA MIND”なんですね。 はい。僕が生まれた1999年はライブに行く意味がめちゃくちゃあったし、ライブハウスにも価値があったはずで。今はそうではないとわかってるんだけど、やっぱりライブを見てほしい。それはこっちのワガママでしかないし、もっとエンタメをやらなくちゃいけないと思ってます。今は自分たちだけでそれを実現できないので、大阪も東京もゲストバンドに出てもらうことになってます。 ――将来的にはPURIKURA MINDのエンタメを確立したい、という気持ちもある? そうですね。曲を作る、ライブをやることが基本なんだけど、ラジオやインタビューだったり、ブログを書くこと、グッズを作ることだったり、なんだってできるじゃないですか。僕はもともと漫画家になりたいと思ってたり、携帯小説サイトに投稿してたこともあって。それもバンドを続けてればできるかもしれない。僕にとってPURIKURA MINDは屋号。そのなかで出来ることは何でもやろうと思ってます。 Text:森朋之 <リリース情報> PURIKURA MIND 1st EP「Starter Kid's」 発売中 【収録曲】 1. Neither A Nor B 2. Lost in the Internet 3. 丁寧な暮らし 4. 週刊少年ヘルプレス 5. 諦めたい夜 <ライブ情報> PURIKURA MIND pre. ANYONE CAN PLAY TOUR 3月3日(日) 大阪・福島2nd LINE 2024 w/ セルフィッシュガール、171、Rudo、トップシークレットマン 3月22日(金) 東京・下北沢 DaisyBar w/ JIGDRESS、Haze