政治を安定させなければパキスタンの経済は回らない パキスタン総選挙
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月9日、ニッポン放送「小永井一歩のOK! Cozy up!」に出演。パキスタン総選挙について解説した。
パキスタン総選挙が実施
小永井)パキスタンでは下院の総選挙が2月8日に実施されました。「パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派」を率いるナワズ・シャリフ元首相は国外逃亡から帰国を果たし、4回目の首相就任を目指しています。一方、軍部と対立して2022年4月に政権の座を追われ、現在投獄中のイムラン・カーン元首相が率いる最大野党「パキスタン正義運動」は徹底排除されており、異様な選挙戦となっています。
インドとイランという強国に挟まれたパキスタン
宮家)パキスタンは不幸な国です。地図を見ていただくとわかるのですが、パキスタンはイスラム教徒の国で、インド独立のときにインドから分離したわけです。そのため、まずインドという大きな敵国が東にある。その反対側には、アフガニスタンとイランがあります。イランも手強い国ですからね。こうしてパキスタンは強い国に挟まれた、地形的にも縦に細長い、地政学的には脆弱な国なnです。 小永井)そうですね。 宮家)インドが攻めてきたらあっという間にやられてしまいます。どこかに逃げ場が必要であり、その逃げ場の一つがアフガニスタンなのです。そういう形でパキスタンは生き残りを図ってきた。これが第1点です。
インドと戦う歴史にあり、軍が強く、民主化とクーデターを繰り返す
宮家)第2に、インドは強いので、パキスタンの歴史はインドと戦う歴史でした。そうするとパキスタンでは当然軍部が強くなるのですが、昔はインドの一部だったのだから、民主主義の伝統問題もないわけではない。しかし、やはりインドとの戦いがあり、軍部が強い。そして貧富の差が激しい。典型的な途上国ですから、どうしても民主主義が上手くいかず、軍部が出てきてはクーデターを起こす。そして強権でビシビシとやる。その結果、一見国がよくなるので「そろそろ民主化でもしようか」と思うと、またガタガタになり、軍部が出てきて……という話を繰り返しているわけです。イムラン・カーンさんは人気があるけれど、パキスタンも民主主義だけでは食えない。もしくは軍部からすれば「これではダメだ」ということで、民主制と軍政の堂々めぐりを繰り返している、不幸と言えば不幸な国ではあります。