デビュー当初は理解されなかった? BMW Motorrad「GS」シリーズはいかにして人気モデルになったのか
理解されなかったコンセプト
BMWモトラッドを代表するモデルであると同時に、アベンチャーツアラー界の先駆車にして王様……フラットツイン(水平対向2気筒エンジン。ボクサーツインとも言う)を搭載する「GS」シリーズに対して、近年では多くの人がそんな認識を持っているのではないでしょうか。 【画像】フラットツインGSの変遷を画像で見る(13枚)
とはいえ、このシリーズの最初の十数年間は、必ずしも順風満帆ではありませんでした。と、私(筆者:中村友彦)は思っています。当記事ではそのあたりも含めて、フラットツインGSシリーズが現在の地位を獲得するまでの経緯を振り返ってみようと思います。 まずは第1号車として1980年に登場した「R80G/S」(俗称:スラッシュ・ジー・エス)の話をすると、200万円前後が珍しくない昨今の中古車相場を考えると想像しづらいですが(1980年型の当時の日本市場での新車価格は135万円)、デビュー後の数年間、このモデルのセールスはあまりパッとしませんでした。 当時の一般的なライダーが大排気量車に求めていたのは、クラストップの最高出力や最高速、過去に前例がない新技術で、そんな状況下で大きなオフロード車、と言うより、オフロード車の美点を取り入れたロードバイクに注目する人は、わずかしか存在しなかったのです。 ちなみに、1980年頃のBMWモトラッドの主力は、量産車初のフルカウルを装備する「R100RS」(1976年~)で、それに次ぐのはグランドツアラーの「R100RT」(1976年~)だったようです。 いずれにしても、当時のライダーが「RS」や「RT」ではなく、さらに言うならネイキッドの「R100」(1980年~)やカフェレーサーの「R100CS」(1980年~)でもなく、「R80G/S」を選択するには、信念や勇気、思い切りの良さなどが必要だったはずです。
パリダカールラリーにおける大活躍
そんなフラットツインGSの評価が変わるきっかけになったのは、パリダカールラリーにおける大活躍でしょう(1981年・1983年・1984年・1985年に優勝)。そしてレースで培った技術を転用して開発され、1987年から発売が始まった「R100GS」は、初代の「R80G/S」と比べれば、多くのライダーからの支持を獲得したのです……が。