「目の前で何人も亡くなった…」元消防士・プログラミング経験ゼロだった「ITベンチャー社長」が、”救急医療のAI革命”を目指すワケ
「救えたはずの患者が、目の前で何人も亡くなっていきました。僕は何もできなかった。この状況を何とかしなければと強く感じたんです」 【写真】M8以上巨大地震「全国危険度マップ」と地震の建物への影響 岩手県八幡平市に本社を置くゴールデンフィールド株式会社は、救急救命活動をサポートする医療デバイスと、人工知能アプリの製作・販売に取り組むスタートアップ企業だ。 代表の金野利哉さん(28歳)は、総務省主催の「起業家万博」東北大会で優勝し、全国大会に出場する10人に選ばれた気鋭の実業家。冒頭の経験から、救急活動をサポートするAIアプリ「Bedside Hero(ベッドサイドヒーロー)」の開発に日々いそしんでいる。
どんな人でも「スーパー救急隊」に
「『ベッドサイドヒーロー』は、救急車内で患者のバイタルサイン(※)を計測し、患者が訴えている内容や、医療者が観察した結果を入力することで、AIが可能性のある疾患を表示します。救急時の診断や治療を補助してくれる装置です」 (※生命兆候のこと……本稿では心拍数、体温、血中酸素濃度、心電図、脈波、血圧を指す) 金野さんが目指しているのは、どんな人でも「スーパー救急隊」として活動できるようなアプリだ。 「もともと日本で救急救命士として働いていて、その後24歳でJICA青年海外協力隊に入隊し、フィリピンでの活動を始めました。 そこで非常に驚いたのですが、現地の救急車はハイエースにベッドを置いただけの状態で、機材も設備も何もない。ただ患者を病院に運ぶだけのものでした。 隊員側の能力も不足していました。日本では救急救命士は専門の国家資格が必要ですが、フィリピンでは簡単な救命講習を受けたレベルの人が隊員として働いています。だからまともな応急処置ができない。 助けられたはずの患者がたくさん亡くなりました。フィリピンだけでなく、発展途上国の救急医療はどこも似たような状況だと知り、これは何とかしなければならないと強く思いました。この時の体験から『ベッドサイドヒーロー』を着想したのです」