須藤早貴被告=2024年9月12日、和歌山地裁、絵・岩崎絵里

　「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん（当時77）が2018年に急性覚醒剤中毒で死亡した事件で、野崎さんを中毒にさせ殺害したとして、殺人罪などに問われている元妻の須藤早貴被告（28）の裁判員裁判の第7回公判が1日、和歌山地裁であった。 【写真】55歳年下の妻は、亡き夫の手をとった 　大阪市で覚醒剤の密売人をしていたという男性が検察側証人として出廷し、須藤被告に「覚醒剤を手渡した」とする状況について証言した。 　男性の氏名は秘匿され、傍聴席から見えないように法廷内に遮蔽（しゃへい）板が設けられた。 　男性の証言によると、仲間の密売人のもとに注文が入り、この仲間を含む計4人で田辺市内まで車で届けに行った。男性は同市内の路上で車から降り、「パケ」と呼ばれる覚醒剤の小分けの袋が入った封筒を女性に手渡した。代金として10万～12万円を受け取ったという。 　当時、女性が「夫に知られないようにしている」と話していたとも証言。検察官が男性に須藤被告の写真を示すと、男性は「和歌山県内で接触した人物に間違いない」と述べた。 　検察側は冒頭陳述で、須藤被告が2018年4月7日、密売サイトを通じて3グラム以上の覚醒剤を注文し、翌日に和歌山で会った密売サイト関係者に十数万円を支払って覚醒剤と思われるものを入手した、と主張している。野崎さんは5月に中毒死した。 　須藤被告は、「殺していませんし、覚醒剤を摂取させたこともありません」と起訴内容を否認し、無罪を主張している。（伊藤秀樹）