ランチ需要の奪い合いが激化。コンビニ業界の「意外な苦境」と、“ファミレス業界首位”の生き残り戦略
ファミレス店舗数No.1を誇るガストも負けていない
物価高騰や人件費の上昇に円安も加わって、低価格で快適な雰囲気の中で食事ができると高評価だったお手頃ファミレスも、値上げの連続で消費者の負担と不満は大きい。長く続いたデフレの中で、ファミレス店舗数1位のガストも相次ぐ値上げを余儀なくされ、今年4月にまた商品の6割を値上げすることを発表している。 物価高騰の中で、ガストはもはや安く提供することは困難であり、中途半端に安い店から脱却し、高付加価値の商品戦略を採用している。何もかもが値上がりする中で、外食に行ってワンコイン(500円)でランチを食べるのは無理な話になってきたのだ。 以前はファミレス最大手のガストもワンコイン(499円税別)で日替わりランチを販売していたが、筆者の近くのガストでは日替わりランチは720円税込(3段階・地域価格制)まで値上がりしている。また以前ほど集客の起爆剤的な役割だったお得な割引券やアプリクーポンも出していない。 そういう販促費も抑制したりと、利益を確保するための経費抑制策を講じているようだ。ガストの原価率は約30%と低く安定しており、これは低価格の品揃えが中心の時から原価管理技術は高く評価されている。東証プライム市場に上場し、株主の目も厳しいから、これらマネジメント能力の高さは当然か。
庶民の味方のガストも新たな店舗戦略にシフト
ファミレスは1食完結型の定食メニューの豊富さが特徴だが、ガストは傘下業態の強みを持ち寄り商品力を強化しており、今は居酒屋客にもアプローチ中だ。そもそもガストが、ちょい飲み客にアプローチしたのは、アイドルタイム(14時~17時)の有効活用から始まったもので、最初はその時間帯だけのお得企画であった。 そのちょい飲み企画が浸透し一定の成果が出てきて定着してきたので、内容を充実させて本格的になったようである。限られたキャパシティを有効に活用するには時間帯の集客対策が必要で、通常ランチタイムとディナータイムのピーク時のお客をいかに分散させるかが、店の売上拡大に直結してくる。 そもそも店の運営にはお客さんが、来ても来なくても必ず行う固定作業(定型業務)と来店客に応じて発生する変動作業がある。キッチンであれば仕込み、ホールであればクリンネスが固定作業だ。どうせスタッフを投入するなら固定作業だけでなく、変動作業にも対応できれば人材の有効活用になる。 個人店などは電気代や人件費がもったいないからと閉める店がほとんどだが、チェーン店はフルタイムで開けているから売上が上がればラッキーなものだ。回転寿司もアイドルタイムに、パフェなどデザート関係を充実させて女子高校生たちを誘引しているのと同様だ。店を開けているのなら席も使わないと、という当然の発想である。