プーチンに領土を割譲するしかないのか…「即時停戦派」のトランプ氏がウクライナに突きつける"厳しい現実"
国際的な制裁措置にかかわらず、ロシア国内の経済は比較的堅調だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、ショッピングモールは活気にあふれ、高級車が首都の大通りを埋め尽くしていると伝えている。国際通貨基金(IMF)は、2024年のロシアの経済成長率予測を3.6%に引き上げており、これは米国や欧州を上回る水準だ。 ただし、インフレ率は今年約8%と高止まりが予想されており、2025年の成長率は1.3%に減速する見通しだ。プーチン政権としては戦争を早期に終結させ、西側諸国の予想を上回る速度で経済制裁の打撃から回復したい思惑があるとみられる。 ■領土死守か譲歩か…厳しい選択を迫られるウクライナ 戦争の終結を巡る各国の思惑は複雑に絡み合っている。トランプ次期大統領は「1日で終結」を掲げるものの、その実現には大きな代償が伴う。ロシアへの領土割譲を含む和平案は、ウクライナにとって受け入れがたい選択肢であることに変わりはない。 その一方で、現実を直視すれば、戦争の長期化がもたらす犠牲は甚大だ。すでに100万人もの死傷者を出し、ウクライナのインフラは破壊され、国民は厳しい冬を耐えている。米国による巨額の軍事支援も、納税者の理解なしに無制限に続けることは難しい。 翻ってロシアの国内事情に目を向ければ、経済制裁下でも予想以上の経済成長を見せ、軍事的優位も保っている。ロシアは対話再開に慎重な姿勢を示しつつも、トランプ政権との関係改善に期待を寄せる。 領土割譲というトランプ流の「取引」による和平は、決して理想的な解決策ではない。一方的な侵略戦争を仕掛けたロシアを鑑みれば、正義が成されたと言うことは到底できない。 ロシアの侵略行為は国際法違反であり断じて容認できない。一方で、戦争終結への現実的な選択肢を探るにあたり、ウクライナにどのような現実的手段が残されているか。一定の譲歩を視野に入れざるを得ない、厳しい現実が立ちはだかっている。 日ごとに死傷者数が膨れ上がるなか、これ以上人命が奪われないよう、いかにウクライナの平和を取り戻すことが可能か。和平交渉への道を探りながら、理想と現実の狭間で各政権は苦しい判断を迫られることになる。 ---------- 青葉 やまと(あおば・やまと) フリーライター・翻訳者 1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。 ----------
フリーライター・翻訳者 青葉 やまと