年間“42時間”も無駄! 交通渋滞は貴重な「時間」「お金」を捨てる行為だ
渋滞による経済的損失
渋滞に巻き込まれてイライラした経験のあるドライバーは多いだろう。近年はインターネットで渋滞情報を確認し、空いている道を選んで走ることができる。スマートフォンで収集したビッグデータから導き出された道順を、これまたスマートフォンで確認できるなど、非常に便利な時代になった。 【画像】ビックリ…! これが60年前の「蓮田SA」です(計13枚) しかし、渋滞は常にどこかで発生しているし、ブレーキを頻繁に踏みながら運転するのはエネルギー効率を低下させ、環境だけでなく財布にもよくない。 国土交通省の調査によると、時速40kmの場合、燃料消費量は1kmあたり69ccであるのに対し、その4分の1の時速10kmの場合、燃料消費量は1kmあたり172ccだ。渋滞は燃料消費量を約2.5倍にし、環境負荷を2倍にする可能性がある。 また、渋滞でひとりあたり年間約42時間を浪費しており、日本全体では約53億時間にのぼる。これを賃金に換算すると、ひとりあたり約10万円、日本全体では約12兆円の経済損失となる。 多くの人が道路をノロノロ運転することで、貴重な時間とお金を無駄にしている。「ときは金なり」である。何とかならないものだろうか。
渋滞税がもたらした変革と影響
日本は山間部が多く、人口は平野部の都市に集中している。そのため渋滞が発生しやすく、東京で車を運転するのはストレスがたまる。参考までに海外の例を見てみよう。 英国では、首都ロンドンへの人口集中が都心部の深刻な渋滞を引き起こした。ビッグデータもスマートフォンもなかった2003年、その解決策として 「渋滞税」 が導入された。 約40年にわたる議論の末に実現し、日本の高速道路のように、都心に乗り入れる車が有料化された。導入当時は1日5ポンド(約1000円)だったが、現在はなんと15ポンド(約3000円)となっている。ロンドン中心部で日中に車を運転するのは、富裕層だけのぜいたくになってしまった。 その結果、渋滞は30%緩和され、交通量は15%減少した。交通事故は40~70%減少し、年間250万ポンド(約5億円)の燃料節減、年間7800万ポンド(約150億円)の経済効率性につながった。 ロンドン交通の対策は、渋滞の緩和という点では非常に効果的だったが、必ずしもすべての人の生活の利便性を向上させたわけではない。 例えば、どうしても都心まで車で移動しなければならない事業者の経済的負担は劇的に増加した。また、バイクは渋滞税の対象外であるため、英国の寒い冬には風雨のなかをバイクで通勤せざるを得ない一般人もいた。行政のスタンスは、 「それが嫌なら公共交通を使ってほしい」 だった。