はるかなり秘境駅⑨ 鉄郎とメーテルの旅路 帰ってきた令和阿房列車で行こう 第一列車
「秘境駅号は、銀河鉄道999号に似ていますね」 秘境駅ランキング3位に輝く小和田駅を前に、サンケイ2号君が妙なことを言う。 銀河鉄道999は、松本零士先生原作の傑作漫画・アニメなのは言うまでもないが、知らない若者も増えたようなので簡単に紹介するとこうだ。 時は2221年。裕福な人々は、機械の身体に魂を移し替えて機械化人となり、永遠の生を謳歌(おうか)していたが、機械の身体を買えない貧しい人々は、機械化人に迫害されていた。そんな折、機械化人に母を殺された星野鉄郎が、謎の美女メーテルとともに銀河鉄道999号に乗り込み、冒険の旅に出る、というもの。999号を引っ張る機関車は、C62型蒸気機関車を模したものだが、それだけでヒットが約束されたも同然だった。 では、どこが秘境駅号と似ているのか。 999号は、車掌が重要な役割を果たす。テレビ版アニメでは毎回、冒頭で到着駅ごとに停車時間を知らせ、終盤、発車時間(放送時間終了)が迫ると、「まもなく発車します」と、乗客に車内へ戻るようせかすが、鉄郎はなかなか戻ってこない。何しろ999号は途中下車ができないお約束なので、子供たちはハラハラドキドキした。 秘境駅号の車掌さんも停車駅に到着前に、停車時間を何度も繰り返し告げる。発車時間が迫ると、ホームから外に出ている乗客に「まもなく発車します」と告げて回っているからだ、と2号君は言う。確かに秘境駅号も乗り遅れると、そこで旅は終わりだからハラハラドキドキする。 2号君は「なんだか鉄郎になった気分ですね」とのたまう。「でもメーテルがいないよ」と喉元まで出かかったが、当方の目が節穴かもしれないので、やめておいた(昔は、メーテルだったかもしれないので)。 さあ、お待ちかねの小和田駅に着いた。 読み方は「こわだ」だが、皇后陛下の旧姓「小和田」と同じ字とあって、平成5年のご成婚時には、両陛下の恋愛成就にあやかろうと、ちょっとした「小和田駅」ブームが起きた。 駅の下にあるちょっとした広場では、結婚式まで開かれ、今も記念のベンチが置かれている。そのベンチには、愛子さまが誕生される前から「愛」の字が書かれていたというから話が出来すぎている。