「ROAD to AVALON」中村悠一、杉田智和、沢城みゆき、大塚明夫らが熱演 光の演出や壮大な音楽で彩る新感覚の音楽朗読劇
最先端の朗読劇を発信し続けている藤沢文翁の世界観とroom NB(ソニーミュージックグループ)の持つ音楽性やテクノロジーの融合により「まだ誰も体験したことのない音楽朗読劇」を追求するエンターテインメントプロジェクト・READING HIGH。完全新作となる「ROAD to AVALON」が、5月11日、12日の2日間にわたって、東京ガーデンシアターにて開催された。 【写真を見る】 本作は世界中で親しまれているファンタジー作品「アーサー王伝説」がテーマとなっている。原作・脚本・演出・作詞を手がけた藤沢文翁が、音楽監督の村中俊之らとともに、「栄光あるアーサー王伝説」が「終末」へと向かう物語を新たに再構築して作り上げた新感覚の音楽朗読劇だ。 スタッフのみならず、キャストも第一線で活躍している声優陣が勢揃い。中村悠一(ランスロット)、杉田智和(モードレッド)、安元洋貴(ガウェイン)、沢城みゆき(湖の乙女/幼少期のアーサー王)、梅原裕一郎(ガレス)、諏訪部順一(アーサー王)、大塚明夫(アンブローズ・マーリン)が集結し、これまで何度も舞台やミュージカルで描かれてきた「アーサー王伝説」を鮮やかに彩る。 「この剣を抜きし者が、ケルトの民を守る王とならん」――物語は伝説の剣であるエクスカリバーを抜いたアーサーが、エクスカリバーに拒まれるところから始まる。円卓の騎士であるランスロットは戦いで敗れ深い傷を負ってしまうが、そこには湖の乙女の姿があり......。次第にランスロットはアーサーの抱える秘密へと迫っていく。 冒頭から印象的だったのが音楽朗読劇ならではの光や炎の演出と壮大な音楽だ。チェロにコントラバス、ギター、ボーカルといった9人のミュージシャンによる音楽が作品の世界観と共鳴しながら華を添え、幻想的な光はまるで異世界へと迷い込んでしまったかのような錯覚へと誘う。特にランスロットが湖の乙女と出会うシーンや、攻め入ったアングロ・サクソンとの戦闘シーンなどは、音楽朗読劇でしかなしえない五感を刺激するものとなっていた。 誰よりも正義感が強く、最後までアーサー王への忠誠を誓うランスロットを演じるのは中村。湖の乙女を演じる沢城とのコミカルな掛け合いや、友人である杉田演じるモードレッドとの怒涛の会話劇を交えながら、ランスロットという勇敢な人物を立体的に演じていた。ランスロットと相対するキャラクターとして描かれていたのがモードレッドだ。モードレッドは円卓の騎士になることができない真相を知り、呪いの道へと足を踏み入れてしまう。しかし、アーサー王が自身を大切に思っていたことを知り、改心していく......。最初こそ情の厚い人物として描かれていたモードレッドが闇へと堕ちていくシーンでは、憎しみや怒りなど様々な感情が入り混じった杉田の演技に胸を打たれた。 物語の鍵を握るアーサー王がアヴァロンへと旅立つ際に、湖の乙女と久しぶりの再会を果たすシーンでは抑揚を交えつつ、「それでも運命に逆らいたくなる。それが人というものだ。だから、許せ。人を」といった言葉で諏訪部がアーサー王の抱える葛藤を見事に表現。それを優しく受け止める沢城の包容力も素晴らしく、しんと静まり返った会場からは何度も鼻をすする音が聞こえてきた。 誠実な太陽の騎士・ガウェインを豪快に演じた安元、頭脳派ながらコミカルな笑いを掻っ攫っていくガレスを誠実に演じた梅原、子どもたちに希望を託す心優しき偉大な魔法使いマーリンを迫力たっぷりに演じた大塚も欠かせない存在となっていた。中でもマーリンがモードレッドを杖で物理的に殴るシーンは大塚の熱のこもった演技に子どもたちへの愛情を深く感じられ、目頭が熱くなった。 新たな視聴体験を届けてくれた「ROAD to AVALON」。声優陣が織りなす声の演技、アーサー王伝説の世界観を彩る生演奏による音楽、アーサー王の生き様を丁寧に描いた脚本、それらが全て揃うことで、聴衆の1人として作品の世界に存在しているかのような没入感を堪能することができた。 本公演の千穐楽公演については2024年5月21日(火)までアーカイブ配信で何度も視聴することができるだけではなく、アーカイブ視聴特典として配信されている「全キャストからのスペシャルコメント」も視聴することができる。実際に観劇できた方はもちろん、観ることができなかった方も新たな体験を味わってみてほしい。 取材・文=川崎龍也
HOMINIS