AI利用は個人の生産性向上から組織全体の生産性向上へ--Box レヴィCEO
この時に課題となるのは、従来のコンテンツ管理システムではAI時代に対応できないことだという。アーキテクチャーが断片化され、データが異なるシステム内に散在している環境では、AIの力は活用できず、セキュリティも担保ができない。このような状況に対して、Boxはインテリジェントなコンテンツ管理を提供するという。 同社では、最も重要な情報を扱う方法を強化するため、最先端のインテリジェントコンテンツクラウドを構築している。コンテンツの作成や取り込みから、コラボレーション、AIによるリッチ化、ワークフローの自動化、電子署名の取得、コンテンツの公開、分析に至るコンテンツライフサイクル全体を、AIを中心に据えた単一のプラットフォームで強力にサポートする。 共有とコラボレーションからスタートしたBoxは、コンテンツの管理と安全確保へと機能を拡張し、ワークフローの自動化とインテリジェンスという新しい時代に入ろうとしているという。「新しい章の幕開けだ」(Levie氏) 同社のクラウドコンテンツプラットフォームでは、容量無期限のストレージなどを提供する「グローバルインフラストラクチャ」、脅威検出やランサムウェア対策を提供する「データ保護とコンプライアンス」、ワークフローやファイルシステムのための「コンテンツサービス」といったレイヤーの上にAIプラットフォームが構築されている。この部分で、検索拡張生成(RAG)や異なるAIモデルの構成などに対応する。さらに、「Microsoft Teams」「Slack」「Zoom」「Salesforce」といったさまざまなサービスやソフトウェアとの連携が可能になっている。 AIプラットフォームの「Box AI」は、最新のAIモデルを企業のコンテンツに安全に接続する。そのため、企業のデータを使った訓練や情報の漏えいを防止する仕組みを備えている。また、権限管理により、従業員がアクセス可能な情報のみを質問の回答として表示する。文書の要約、特定内容に関する質問、多言語による表示などを可能にする。また、マルチモーダルもサポートする。マルチAIプラットフォームに対応するので、OpenAIやGoogle、IBMのAIテクノロジーの利用に加え、将来的にはBring Your Own Model(BYOM)にも今後可能にする予定だという。 メタデータはビジネスプロセスの生命線とLevie氏はいい、契約書のようなドキュメントでは、契約者や住所、クライアントといった情報の抽出・活用が可能だとする。現在、Box AIによるインテリジェントなメタデータ抽出を可能にする新しい「Metadata API」のベータ版が提供されている。 「Box AI API」は、Box AIの機能を拡張してサードパーティー製アプリケーションやカスタムアプリケーションをさらに便利に利用できるようにする。現在、プライベートベータ版として提供されるが、日本でも数カ月以内に展開される予定だという。 Box AIは当初、「Enterprise Plus」プラン向けに提供されたが、1ユーザーにつき月当たり20クエリーまでという制限があった。Box AIをより広範囲に展開して利用を促進したいというユーザーからの声を反映するため、Enterprise plusプランで「Box Al for Documents」「Box Al for Notes」「Box Al for Hubs」でのクエリー数制限を撤廃するとLevie氏は発表した。今回の日本での発表に続き、今週末までにグローバルでも発表するという。 最後に古市氏が再登壇し、日本でのビジネス状況について語った。Box利用企業数は、2019年の4800社から1万8000社へと約3.5倍に増加。その理由ついて、「製品特性と市場ニーズの合致」と「Box Japanの特徴」を挙げた。 製品特性と市場ニーズの合致では、コンテンツの一元管理と全社活用を可能にするとともに、ユーザー自身が存在すら知らないコンテンツから情報を引っ張ってきて提案するAIの力が挙げられるという。さらに、活用目的に応じてAI機能を選択できるようになっていると古市氏。同社では、ノーコードとAPIでドキュメントライフサイクル管理を自動化することにも力を入れており、ノーコード開発ツール「Crooze」の発表も予定しているという。 2025会計年度事業戦略として「Box AI元年」を掲げ、ファイルの同期と共有、コンテンツ管理とセキュリティに続くインテリシェンス加速を本格化させると古市氏はアピールする。 Box Japanの特徴としては、迅速な意思決定やフラットな上下関係、ダイバーシティーといったシリコンバレー企業のいいところと、横連携を促すレポートライン、チャネル活用、リストラをしない経営といった日本企業のいいところを合わせるという。さらに、シリコンバレー企業と日本企業の両方に共通としてある当事者意識を強く持つことで、「働きがい」「働きやすさ」のある企業を目指す。