「妻をバラバラに…?」思考が活性化するパズル映画(2)断片的な悪夢…鬼才の才能炸裂な不条理ミステリー
今回はパズルのように緻密で複雑なストーリーが特徴の、観るだけで頭が良くなりそうな作品を5本セレクト。列車爆破阻止のミッションに挑むタイムリープ、記憶喪失の男と身に覚えのない殺人…。予想できない展開や幾通りも可能な解釈に、脳がフル回転する作品たちを紹介する。今回は第2回。
『ロスト・ハイウェイ』(1997)
上映時間:135分 製作国:アメリカ 監督:デヴィッド・リンチ 脚本:デヴィッド・リンチ、バリー・ギフォード キャスト:ビル・プルマン、パトリシア・アークエット、バルサザール・ゲティ、ロバート・ブレイク、ロバート・ロジア、ゲイリー・ビューシイ、リチャード・プライアー、ジャック・ナンス、ジョヴァンニ・リビシ、マイケル・マッシー 【作品内容】 サックス奏者のフレッドはある朝、自宅のインターホン越しに「ディック・ロランドは死んだ」という謎のメッセージを受け取る。その後、彼のもとに届く一本のビデオ・テープ。そこには、彼自身が妻をバラバラに切り刻む姿が写っていたー。鬼才デヴィッド・リンチの才能が炸裂する不条理ミステリー。 【注目ポイント】 本作は、『イレイザー・ヘッド』で知られる「カルトの帝王」デヴィッド・リンチの長編7作目。主演は『インデペンデンス・デイ』のビル・プルマンが務める。 シュールなストーリー展開、断片的な悪夢のようなシーンー。デヴィッド・リンチの作品はどれも複雑怪奇なストーリーに彩られており、解釈も観客に委ねられている。しかし、本作の場合はリンチ自らモデルとなった事件を公表している。O.J.シンプソン事件ー。元プロフットボール選手のO.J.シンプソンが、元妻とその友人を殺害したとされる事件である。リンチがとりわけ注目するのは、過度なストレスで記憶が失われる「心因性記憶喪失」。この事実を念頭に置けば、本作自体が主人公の妄想であることが分かる。 いや、それでもリンチの映画に単一の解釈などないのかもしれない。夢に無数の解釈があるのと同じように。
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