殺虫剤が効かない「スーパートコジラミ」も 一度繁殖したら駆除は困難 最も効果的な予防法は?
スーパートコジラミ出現
トコジラミは第2次世界大戦後、日本国内にまん延したが、強力な殺虫剤の普及により激減。しかし、2000年ごろ、従来の殺虫剤に耐性を持つ「スーパートコジラミ」が出現し始めた。
このスーパートコジラミは、殺虫剤に耐性を持つだけでなく、殺虫剤が散布された場所から逃げ出してしまう。つまり、殺虫剤を散布することで、それまで一つの部屋にとどまっていたトコジラミの生息場所を広げてしまう恐れがある。有機リン系の殺虫剤はスーパートコジラミにも効果があるが、潜伏場所を絞り込むことが難しいため、自力での駆除は難易度が高いという。
東京・大阪で過去最多、長野県内は…
トコジラミが広がる背景には、新型コロナの5類移行、円安による外国人観光客の増加といった人流の活発化があるとみられる。日本ペストコントロール協会(東京都)のまとめによると、新型コロナ感染拡大前の2019年のトコジラミの相談件数は全国で709件、長野県では25件だったが、コロナ禍の20年には全国534件、長野県は8件に減少。しかし、その後のコロナ禍の収まりを受け、都市部を中心に急増。23年に東京都のペストコントロール協会に寄せられた相談件数は350件、大阪府の協会の相談件数は326件で、ともに過去最多になった。
一方、長野県内は現時点で目立った増加はみられない。ただ、スキーなどを目的に海外からも客が多く訪れる時期でもあり、県食品・生活衛生課は宿泊施設などに予防策を伝えるなどしているという。
宿泊施設 タイムラグで勢力拡大
多くの人が出入りする宿泊施設は、トコジラミが持ち込まれるリスクも、トコジラミを持ち出すリスクもある。さらに、もしも宿泊先でかゆみ症状が出て、その後にトコジラミが原因と分かったとしても、「あのホテルで刺された」という確証がなければ、わざわざ宿泊施設に連絡をしないという人も少なくないだろう。
そのため、宿泊施設側がトコジラミに気付くまでに、被害の発生から時間が経ってしまう場合も多いという。こうして同じ部屋に泊まった人が刺され続け、繁殖が進み、宿泊者がまた次の場所へとトコジラミを運んでしまう…。
しかし、トコジラミを気にしてばかりでは、どこにも出かけられない、やっと戻ってきた人の往来を守るためにも、それぞれができる範囲でトコジラミの侵入と持ち出しを防いでいきたい。(松沢佳苗)