俳優・田中圭が放つ“ズルい”魅力 『おっさんずラブ』から『わたしの宝物』まで
田中圭が表現する『わたしの宝物』宏樹の“内に秘めた葛藤”
『わたしの宝物』に関してはまだその本質は明確になっていないが、美羽と宏樹の関係からすでに見えてきているのは「夫婦であっても相手に言えないことはあって、お互いのことを完全に理解できているとは限らない」ということ。宏樹は美羽が外で別の男性と関係を持ち、その人の子を宿したことに気づいていないが、美羽もまた宏樹の抱えているものに気づいていない。 おそらく宏樹を変えてしまったのは、「男たるものかくあるべし」というプレッシャーなのだろう。大手商社に勤務し、中間管理職として上からも下からも挟まれている宏樹。上司からはノルマ達成や部下の尻拭いを強いられ、部下からは便利な上司としてほんのり馬鹿にされている。自分の希望で美羽を専業主婦にした手前、辞めたくても辞められない。だけど、とっくに体は悲鳴をあげていて、顔を歪めて胃をさする宏樹の姿があまりにリアルでこちらまで冷や汗をかきそうだった。 そんな中、美羽の妊娠が判明し、子供にも酷いことをしてしまうのではないかという不安から、子育てには一切関わらないことを宣言。だが、生まれてきたばかりの子を抱いた瞬間にどうしようもなく愛情が湧き、宏樹は声を上げて泣く。あの姿を見て、心から宏樹を憎める人は果たしているのだろうか。本当は誰よりも感受性が豊かな宏樹がこの先、真実を知ってしまったときにどうなってしまうのか心配になってしまった。たった第2話でそこまで視聴者に肩入れさせてしまうのだから、やっぱり田中圭という俳優はズルイ。
苫とり子