能登地震1カ月 学校再開、笑顔で教壇に 石川県輪島市の中学教諭 福島大出身の横町柚里佳さん
能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市。山あいの門前地区にある門前中で理科教諭の横町柚里佳(ゆりか)さん(22)が教壇に立つ。福島大共生システム理工学類を昨春卒業した新任だ。学校は1月24日に再開した。不安を和らげようと普段通りに明るく生徒に接する。「生徒が元気に登校し、安心して授業を受けられる環境をつくりたい」と笑顔を絶やさない。(白河支社・水口薫) 1月31日、間借りしている門前東小の教室で、横町さんが声を張り上げた。「空欄に入る言葉は」。天体の問題を映したスライドを指した。3年生の9人はすぐに答えを出した。 門前中の全校生徒は54人。輪島市は中学生を集団避難させているが、同校の生徒のほとんどは地元に残り、自宅や避難所から通う。家庭の状況を考慮し、オンライン授業も行っている。授業は午前中のみ。慣れない環境に生徒は苦労しているが、横町さんはいつもと変わらない明るい授業を心がける。「生徒に積極的に声をかけ、寄り添うようにしている」
横町さんは輪島市の南にある中能登町出身。理科教諭を目指して福島大に進学した。剣道部に所属し、充実した大学生活を送って夢をかなえた。 1月1日の激しい揺れには恐怖を感じた。実家で過ごしていた。家具が倒れ、食器が割れた。家族は無事だったが、「今後の生活や仕事がどうなるのか不安だった」と振り返る。東日本大震災を経験した大学の先輩や同級生からスマートフォンに「早く安全な所に」とメッセージが届いた。1週間後、剣道部の先輩が車で食材などを届けてくれた。 今は学校で寝泊まりすることもある。生徒をどう支えるか、不安や悩みは尽きないが、自らを奮い立たせる。大学時代、友人や先輩との交流で、大きな災害の際には速やかな避難や安全の確保、地域とのコミュニケーションが大切だと知った。再び災害が起きた時に生徒に教訓を伝える必要性を感じている。授業では自然災害の仕組みも教えるが、「教科書に出ていることだけでなく、経験や教訓を子どもたちに伝えていく」と誓う。