泊まれる美術館、ゆるり作品制作 郡山・小さな森の和、地域の魅力紹介
郡山市東部の西田町にある自然に囲まれた古民家美術館「小さな森の和(やわらぎ)美術館」は今月から、「短期滞在型アトリエ民泊」と銘打った新しい民泊事業に乗り出す。部屋を宿泊者に制作場所として利用してもらい、完成した作品の展示・販売までを支援する。ほかにはないユニークな「泊まれる古民家美術館」として注目されそうだ。 美術館は森の中にある築約150年の古民家を再生し、2014年にオープンした。「癒やしの場を作りたい」と、館長の大島和子さん(67)らが少しずつ改修を進め、土間やいろりを残したまま雰囲気のある展示空間に生まれ変わらせた。収集してきた美術家長田良夫さん、彫刻家佐藤賢太郎さんら多くの作家の作品を展示しているほか、コンサート、演劇なども開催してきた。 新たなサービスを始める理由は、多くの作家を目指す人たちの制作環境が十分ではないこと。「家だと落ち着いて制作できない」などの声を聞くこともあり、開館から10年の節目に作家のための民泊を思い立った。さらに、完成させた作品を同館で展示・販売することでファンの獲得や収入につなげ、作家の育成に役立てる。珍しいこの取り組みは経営革新計画として県に承認された。 利用については、プロや作家を目指している人、趣味で活動している人など対象は問わない。また、作家活動をしていない一般の人も古民家に泊まって、じっくりと美術品を楽しむことができる。 部屋には絵の具などをあえて置かず、美術品と自然に囲まれた空間に泊まって構想を練り、自由に作品を作ってもらう。絵画や彫刻など美術作品だけでなく、音楽や詩などさまざまなジャンルを想定。「宿泊してワークショップに使いたいという声もある」と大島さん。「いろいろな形で活用できる。利用者の提案を受けながら幅広く考えていきたい」と思いは膨らむばかりだ。 西田町には高柴デコ屋敷をはじめ、レストランや古民家カフェなど個性的な店も多いが、宿泊施設は数少ない。美術館に泊まって周辺を巡ってもらうことで、地域の魅力を紹介し、活性化につなげる狙いもある。大島さんは「一歩踏み出せるような、皆さんの居場所になればいい」と期待を寄せる。(鈴木祐介)
民泊へ改装、12日オープン
民泊事業の導入へ約1年をかけて準備を進め、古民家美術館の1階と2階を改装、宿泊できる計3部屋と制作場所を設けた。1階にはシャワー室もある。宿泊は1泊素泊まりで5000円、改装オープンは今月12日の予定。詳細はホームページで。問い合わせは美術館へ。
福島民友新聞