未婚女性がPR役になるのはなぜ?性別不問にした山形の「ミス花笠」、でも結局男性は選ばれず
8月5~7日に開かれた、東北を代表する夏祭りの一つ「山形花笠まつり」は今年、PR役の「ミス花笠」に男性も応募できるようにした。60年続いた祭りの歴史で大きな転換だ。しかし、名称は「ミス」のままで、未婚という条件は変えず、用意している衣装も女性用だけ。結局、26人が応募したうち男性はわずか2人で、ミス花笠に選ばれたのは例年通り女性4人だった。 【動画】「山形花笠まつり」東北を代表する夏祭りの一つ
そもそも、伝統あるイベントの〝顔〟に未婚女性が選ばれてきたのはなぜだろう。各地の自治体では今も、観光大使や農産物の販売促進で多くの「ミス」が活動している。男性にも門戸が開かれつつあるが、祭りの歴史や各地のケースを探ると、「性別不問」にすれば解決するわけではない実情が浮かび上がってきた。(共同通信=中村茉莉) ※記者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽「議論に時間かからなかった」 山形花笠まつりの主催団体は、山形商工会議所や、山形市、市観光協会、地元新聞社が中心となっている。ミス花笠の応募資格については、2024年1月、各担当者が集まった運営協議の会合で議題になり、それまでの要件だった「県内に住む18歳以上の健康で明朗な未婚の女性」を変えるかどうかが諮られた。 東北では「ミス」を男女不問にする事例が相次いでいた。山形県内から「祭りに貢献したい」という男性の要望が寄せられてきたこともあり、事務局サイドは、まずは性別規定を変えようと判断。秋田市の「あきた観光レディー」や福島県の「ミスピーチキャンペーンクルー」といった先行事例を参考にして、商工会を中心に関係団体へ説明を進めた。
こうした事前調整があったためか、会合では「ミス」の呼称を変更する必要性や、実際に男性が応募してきた場合の衣装の問題、未婚規定の変更については意見が出なかった。出席者の1人は「かんかんがくがくの議論はなかった。他にも話し合うことがあり、時間はそんなにかからなかった」と振り返る。具体的な中身は詰められることなく、その場にいた十数人のメンバーが了承して、性別要件をなくすことだけが事実上決まった。 ▽相次ぐ問い合わせ 2月上旬、主催団体が公表した募集要項とチラシには、いずれも男性が応募できるとは明示されていなかった。募集要項は応募資格の一つが前年の「未婚女性」から「未婚の方」に書き換わっただけ。チラシはピンク色の紙に印刷され、写真はいずれも女性である前年のミス4人が並んでいた。 実際に混乱もあった。性別要件が撤廃されたことが報道されると、主催団体には「ミスター花笠を新たにつくるのか」「トランスジェンダーの応募を想定しているのか」といった県民の問い合わせが相次いだ。担当者はこう振り返る。「単純に性別の垣根をなくすのは考えが甘かった。ミスの呼称を残したことで混乱を招いた側面はある」