ホリプロ“グランプリ”の木南晴夏 「脇役ばかり」で挫折も『セクシー田中さん』で初主演を掴んだワケ
木南晴夏主演のドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)。昼は地味なOLが、夜は妖艶なベリーダンサーSaliに変身。木南演じる田中京子の華麗なる変身ぶりに、ネット民からも賞賛する声が止まない。 【”セクシー”な写真も…】木南晴夏 「えっ、太ももまで…」あわや階段で…のハプニング このドラマは、芦原妃名子による同名漫画が原作。田中さんは、経理部の40歳になる独身OL。税理士の資格を持つ超優秀な女性でありながら、友達も彼氏もできたことがない。会社や周囲にベリーダンサーであることをひた隠しにしているが、ある日後輩の派遣OL・倉橋朱里(生見愛瑠)に見破られてしまう。 「木南は、今年1月期に放送され、『東京ドラマアウォード2023』の作品賞“連続ドラマ部門”でグランプリに輝いた『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)に出演。主演する安藤サクラの幼馴染役を好演したことは記憶に新しいところ。 木南がGP帯の連ドラで初主演することを知った安藤は、『こんな両方ハマる女優さん他にいないし、ピッタリすぎる』とコメント。念願の初主演で、業界でも大きな注目を集めています」(ワイドショー関係者) 木南といえば、個性的な役柄を演じるバイプレーヤーとして知られる。 ‘11年から始まった福田雄一脚本監督のドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)では、魔法使いのムラサキ役。‘18年の月9ドラマ『海月姫』(フジテレビ系)では、“枯れ専”(枯れたおじさま好き)で影の薄いジジ様。 ‘19年のドラマ『トクサツガガガ』(NHK)では、特撮オタク女子。ドラマ『セミオトコ』(テレビ朝日系)では、真面目だが地味でさえないアラサー女子。と、振り切った役どころで、これまで大きな爪痕を残して来た。 そんな木南だが、最初からバイプレーヤーを目指していたわけではない。 「木南は‘01年『第1回ホリプロNEW STAR AUDITION~21世紀のリカちゃんはあなた!!~』でグランプリを獲得して芸能界入り。だが、主役を射止めるためにオーディションを受けるも合格するのは“ヒロインの友達役”ばかり。 ‘09年の映画『20世紀少年』でもヒロイン(平愛梨)の友達・小泉響子役に決まり、ショックのあまり辞退を熱望。事務所に説得され渋々出演したところ、監督や原作者に評価され一躍注目を集める存在となりました」(前出・ワイドショー関係者) 元々、クラシックバレエ、日本舞踊、ダンスを得意とする木南。しかも地味な独身OL役は、これまでドラマ『セミオトコ』などで、折り紙つきの演技を披露している。 原作漫画を手掛ける芦原妃名子も 「凛としているけど繊細で、強くて弱くて大人で少女の様な多面的な田中さんを、きっと木南さんならより魅力的に演じてくださるはず」 とコメントするのも頷けるところだろう。いやそれどころか、この役を演じられるのは“芸能界広し”といえども木南晴夏以外にありえない、といっても過言ではない。 個性派バイプレーヤーの道を極めてきた木南晴夏。その影で、多彩な役柄をこなすための努力を怠ってはいない。 「日韓の男女7人の恋愛群像劇、映画『知らない、ふたり』(‘16年)に出演した木南は、劇中で流暢な韓国語を披露して観客を驚かせたことがありました。実は彼女は‘10年に出演したドラマ『素直になれなくて』(フジテレビ系)で韓国人役を演じて以来、およそ1年間、韓国語学校に通い韓国語をマスター。そうしたスキルを買われて『知らない、ふたり』への出演オファーがあったようです」(制作会社プロデューサー) 『セクシー田中さん』で、GP帯の連ドラ初主演を飾る木南晴夏。しかしこのドラマで彼女が女優として背負うミッションは、“華麗なる変身”だけではない。それを解く鍵が第1話に登場する。 友達の進吾と一度寝ただけで都合のいい女扱いされる朱里(めるる)が、大統領選に破れたヒラリー・クリントンの“敗北宣言”を観て、涙するシーンが登場する。 「私たちは、まだあの最も高く硬い“ガラスの天井”を打ち破ってはいません。でもいつの日か誰かが成し遂げてくれるでしょう。きっと私たちが思うより早く。 そしてこれを見ているすべての少女たちへ。あなたたちには価値があり、力があり、あなたの夢を追い求め叶えるために、この世のあらゆるチャンスが与えられていることを信じてください」 この“敗北宣言”を観て、こぼす朱里の涙。この涙にこそ、就職活動を頑張っても派遣社員にしかなれず、一人で生きていくのは無理だから普通の結婚をしようと考えている朱里のジレンマや哀しみが込められているのではないか。 このドラマのもう一つの使命。それは“ガラスの天井”を打ち破りたいと願っている女性たちの背中を、そっと押してあげることなのかもしれない。 自身も数々のバイプレーヤーを演じ、辛酸を舐めた経験を持つ木南晴夏。今作では、みずから“ガラスの天井”を突き破った女優としての矜持が試されている。 文:島 右近(放送作家・映像プロデューサー) バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中
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