〝往診サービス〟が岐路に 続々と終了、利用者負担増 理由は「診療報酬改定」、なぜ?
改定案発表から2週間で
2年に1度、見直され、医療機関の収入を左右する診療報酬。その改定案が、2月14日の厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会で了承された。 幅広い医療従事者の賃上げに充てるため、初・再診料や入院基本料などの基本的な報酬を引き上げられたことが注目された。マイナンバーカードを健康保険証としても利用する「マイナ保険証」を後押しする報酬などが新設されたほか、患者にも負担を求める形だった。 その中で、往診に関する診療料にも変化があった。「普段から訪問診療を受けていない患者等」、つまり前述の往診サービスの利用者層の緊急往診や夜間等の往診は厳格化され、低い設定になった。 そのため、改定案の発表後、前述の往診サービスの動向が、SNSなどで注目を集めていた。「みてねコールドクター」は、その迅速な反応がかえって話題を呼び、それから2週間ほど経って、他の事業者が方向性を示したという流れだ。 東京都で訪問診療を主とする「おうちの診療所」を運営する石井洋介医師は、今回の診療報酬の改訂内容について「保険診療で後押しするべきは、具合が悪くなったときにだけ駆けつける医師ではなく、日常を守るかかりつけ医、というメッセージだと感じた」と話す。 「緊急往診や夜間等の往診の診療報酬を手厚くすることで、不必要な救急搬送を減らし、医療現場の負担が軽くなることが期待されていましたが、実際には救急搬送は減らず、ほとんどが小児科領域の往診だったというデータもあります。コロナ禍という特殊な環境下では助かった人も多いと思いますが、以後も保険診療で行う意義は以前から議論されてきました。 本来、医療制度の設計で問われるべきは、いかに地域の医療の負担を減らすかということ。どれだけ往診をこなせるかではなく、予防的アプローチや情報共有など日中にできることをかかりつけ医が徹底することで、往診の負担を減らす方向性が望ましいと感じます」