クルド人を絶望の淵に落とす、日本の入管難民法改正 差別と弾圧に加えて大地震…「故郷で生活できない」のに強制送還か
▽迫害、地震、法改正。重なる苦難 エリフさんたちが日本で暮らす中、同胞にはさらなる困難が降りかかった。2023年2月に起きたトルコ・シリア大地震だ。エリフさんの出身地、トルコ南部カフラマンマラシュ一帯にも大きな被害が出た。かつて住んでいた家は完全に崩れ落ちたという。 地震から4カ月以上が経過した2023年6月の時点でも、親族、友人はテントやコンテナ式仮設住宅で暮らしている。 「クルド人が多く住む村は、政府の支援も行き届かない」と打ち明ける。 エルドアン大統領は5月の大統領選で勝利し、政治体制が変わる気配はない。日本からトルコに送還されたクルド人の中には、トルコ到着直後に逮捕され、裁判にかけられた人もいる。いったん日本に逃れたことで、帰国すると反政府的とみなされて弾圧を受ける恐れが高まっている。「トルコにはもう帰れない」 ▽「子どもはどうなってしまうのか」 改正入管難民法は、そんな不安定な立場におかれるエリフさん一家に追い打ちをかけた。3回目の難民申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示されなければ送還対象となり、送還を拒んで航空機内で暴れるなどの行為に及べば刑事罰が科される。このため、エリフさんも2回目の申請で難民と認定されなかった場合、強制送還される恐れがある。
最大の不安は6歳の娘のことだ。物心がつく前に来日し、トルコでの記憶はない。現在は川口市内の幼稚園に通い、友達の多くも日本人だ。トルコ語は両親との日常会話で使う程度で、簡単な単語しか理解できない。 「子どもはどうなってしまうのか。トルコに行っても生活できない。娘には日本人と同じように育ってほしい」 エリフさん自身も、オンライン教室などで日本語を熱心に学んでいるが、その努力も無駄になるかもしれない。「入管に、私たちはここにいたいと伝えたい」。記者の目を見つめながら、「人権が欲しい。送還しないでほしい」と強く訴えた。