米GMが「水素燃料電池車」に本腰、作業用トラックのテストを準備中
米国最大の自動車メーカーであるゼネラルモーターズ(GM)は、過去数十年にわたり水素燃料電池の実験を進めてきたが、まだ販売を行っていない。しかし、同社はこれらの車両を電力会社に作業用車両として販売するためのテストを行っている。 GMのハイドロテック部門は3月5日、燃料電池システムを搭載したピックアップトラックを、大手電力会社サザン・カンパニーに今年後半に納入すると発表した。この車両は、1回の燃料補給で300マイル(約480キロ)以上を走行可能で、電力供給システムとしても機能する。燃料補給は、サザン・カンパニーとノルウェーの電解槽メーカーNel(ネル)が共同で開発した再生可能電力システムから水素を発生させるステーションで行われる。 このテストプログラムの費用の一部は、GMが2021年に米エネルギー省から交付された助成金2600万ドルから支払われる。GMは、何台の燃料電池トラックをこのプログラムのために製造するのか、また最終的に商業化する計画なのかを明言しなかった。 ハイドロテックのプログラムマネージャーであるジェイコブ・ロジャーは、記者団に対し、このトラックに搭載される高出力の燃料電池システムは、最大300キロワット以上の電力を発生させることが可能で「作業現場での電力供給や、充電ステーションが利用できない地域での電気自動車(EV)の充電に使用できる」と説明した。「このシステムは、米国の家庭250世帯における1日の電力を賄えるほどのパワーとエネルギーを備えている」と彼は述べている。 水素燃料電池は、技術的な課題とコストの高さから乗用車には向かないが、商用トラックやバンには有望な技術とされている。米国の自動車メーカーであるニコラは昨年、カリフォルニア州で水素燃料電池トラックの販売を開始し、ダイムラーやボルボ、ヒュンダイなどもこれに続こうとしている。
日本のコマツとも提携
燃料電池はバッテリーシステムを上回る航続距離とパワーを提供可能で、気温を問わず安定的に作動し、EVの充電にかかる時間の数分の一で燃料を補給できる。しかし、水素の難点は輸送や貯蔵が難しくコストが高いことで、産業用途以外での利用が遅れている。米国内の水素ステーションはまだ60カ所足らずで、そのほとんどがカリフォルニア州にある。 カリフォルニア州では、トヨタのMIRAI(ミライ)やヒュンダイのNEXO(ネッソ)などを中心とした1万8000台以上の水素燃料電池車が走っている。GMと燃料電池技術で提携しているホンダは、今年カリフォルニア州でプラグイン電気自動車としても動作する新型燃料電池車「CR-V e:FCEV」のリース販売を開始予定だ。 ■日本のコマツとも提携 2020年にGMはニコラと水素燃料ピックアップでの提携を計画したが、その直後にニコラの創業者のトレバー・ミルトンが複数の不正で告発されたため、GMはこの契約から手を引いていた。ミルトンはその後、証券詐欺で有罪となり、昨年末に禁固4年の判決を受けた。 GMは、今回のハイドロテックのプロジェクトの以前にも、セメントミキサー車といった特殊な用途向けの燃料電池車の計画を明らかにしていた。同社は昨年末に、コマツの鉱山用の超大型ダンプトラック向けに水素燃料電池パワーモジュールを共同開発すると発表した。GMはまた、トラックメーカーのNavistar(ナビスター)や鉄道業界向けに貨車や機関車を製造するWabtec(ワブテック)にも燃料電池技術を提供している。 「当社は、燃料電池テクノロジーが、大型車両を電動化するための理想的なソリューションだと考えている。この技術は、パズルの重要なピースだ」とハイドロテックのエグゼクティブ・ディレクター、チャーリー・フリースは語った。
Alan Ohnsman