柳楽優弥の目、坂東龍汰の演技は三重丸 是枝裕和監督作品を想起させる…テンポいいヒューマンサスペンス「ライオンの隠れ家」
【TV視てますか?】 「僕たち兄弟の日常は凪(なぎ)のように静かだ。波風を立てることなく、毎日同じことを同じ順番で淡々とこなしてゆく」 TBS金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」の初回の冒頭は、そんなナレーションで始まった。そして案の定、「凪」が激しい「波風」へと変わる。 茨城県内の市役所に勤める兄(柳楽優弥)は、自閉スペクトラム症の弟(坂東龍汰)と2人暮らし。両親を早くに亡くしてからは、常に弟のルーティーンに合わせた生活を送っていた。ところが2人の前に突然「ライオン」と名乗る男の子(佐藤大空)が現れる。弟はパニックをきたす。 しかも、ライオンの体にはDVの痕と思われるアザがあった。実は兄弟には子供の頃に生き別れた異母姉がいた。 ライオンのスマホにメッセージが届く。そのフレーズや、カレーにマヨネーズをかけるなどのクセ、独特のしぐさを見て、柳楽はその姉がライオンを置いていったのではないかと思う。ライオンを警察に引き渡す寸前で取りやめ、3人で暮らし始める。 ちょうどその頃、山梨県で母子行方不明事件が発生。男(向井理)が行方不明届を出したことが報じられる。彼の妻子が異母姉(尾野真千子)とライオンだと柳楽は確信。山梨を訪れ、知り合った新聞記者(桜井ユキ)らとともに向井に近づくが…。一方、血痕の付いた衣類が見つかり、尾野のDNA型と一致して…。 名シリーズ「おっさんずラブ」で名を上げた徳尾浩司が、一戸慶乃と共同で脚本を担当。テンポのいいヒューマンサスペンスに仕上がっている。ヒューマン性とサスペンス性の使い分け、さじ加減がいい。柳楽が主演していることもあり、映画「誰も知らない」をはじめとする是枝裕和監督作品を想起させもする。一戸は今後の期待大だ。 特に第3話は、3人暮らしになったことで弟が明らかに変化していく様子を、兄の目線で、ナチュラルに描いていた。柳楽の驚きと自戒を込めた目の表情、坂東の迫真の演技はとりわけ三重丸だ。 (新橋のネクタイ巻き)