『虎に翼』脚本・吉田恵里香インタビュー「最終回まで『虎に翼』らしい作品になっていると思います」
◆女性の生きづらさが本作のテーマの一つになっていますが、テーマに懸けた思いや描くに当たって意識したことはありますか? 女性の社会進出、女性の生きづらさを描いた作品ではありますが、それは社会の生きづらさにつながると思っていて。女性が生きやすくなったからといって男性が生きづらくなるというのは違うので、そこに気をつけながら書きました。でも理解あるふりをして人を傷つけてしまうこともあると思いますし、そもそも全く理解できない人もいる。全てが正しい、完全に善人だという人はいないように書いています。作中でもありましたが、「これだけ寄り添っているのに」という気持ちは少なからず生まれてしまうのが人間だと思うので、そことどう向き合っていくかというのを登場人物全てにおいて意識しました。 ◆寅子と同じように花江(森田望智)も先を歩いてきた女性の一人で、より広い女性の共感を得る大事なキャラクターですが、吉田さんが花江に託したことや描く上で大事にしたことがあれば教えてください。 花江はこの作品のもう一人の主人公だと思っています。朝ドラでは何かを成し遂げた男性の妻がヒロイン、という構図がよくあると思うのですが、花江もそれになりうる人だなと。花江が主人公の朝ドラがあってもおかしくないように書いたつもりです。 花江は社会に出たい、働きたいという気持ちは一切なくて、家庭に入って家族を支えたり家族のために生きたりすることに幸せを感じている。彼女が働いたのは戦後の縫い物の内職くらいなんですよね。 社会構造として、バリバリ働く人のためにはそれをケアする人がいないといけないということにどうしてもなっちゃうところもあって、その改善策が自分の中でも分からないのですが、支える側が二軍扱いのようにされてしまうところが少し気になっていて。お互いに支えて家庭を円満にするというのが大切であって、心地よい生活を提供する、ご飯がある、シャツがピンとしてる…などは、それをやる人の努力ですし、花江はそういうことに対してのプロなんだということを意識して描きました。 でもそれをやらされているみたいに思われるのも違うと思っているので、猪爪家はみんなで支え合うという方向に途中から変わっていますが、主戦力は花江であると。なので、彼女を取り巻くいろいろな考え方が見えてくる、というふうに描いたつもりです。 ◆仕事や家庭の問題というのは人の幸せを考えたときに切っても切れないものですが、吉田さんが今思う“幸せ”についてお聞かせください。 いろいろなところで起きる争い、それはネット上のことから戦争のことまで含みますが、その一つでも多くの種が消えたり、和解したものが見えると幸せを感じます。自分ではどうにもできないことというのはたくさんありますが、それがなくなっていくといいなと思います。 身近なところで言うと、また朝ドラのオファーが早いうちにくることが幸せですね(笑)。
TV LIFE web