高速道路の料金変動制「ロードプライシング」を全国へ適用というニュースの波紋
筆者がよく使うのは東名高速道路と東京湾アクアラインだが、以前よりも平日・朝夕の渋滞はひどくなっている印象がある。 大型連休の15km、20kmといった大規模な渋滞を取り上げたメディアも多いが、日頃から高速道路を利用する筆者には、「その程度の渋滞なら平日の混雑時と大差ない」と感じられる。 もちろん、細かい制度の設計はこれからであるため、利用者が感じるさまざまな懸念は払拭されていくかもしれないが、通行料に関しては総じて不満が大きく、また現在の政府が本当に利用者のことを考えて施策を行うかを考えると、不安な声が上がるのもよく理解できる。
■「道路と鉄道」2大インフラの関係 高速道路の建設や維持に莫大な予算がかかるのは、山間部の多い地形の日本ではやむをえない面もある。また、高速道路のロードプライシングは外国にも例があるので、導入への抵抗は少ないかもしれない。 ただし、ロンドンやシンガポールなどのロードプライシングは、都市部へのクルマの流入をコントロールするために設けられた施策であり、日本で“全国的に”行うとしたらどの区間にどのような料金差をつけるのか、完全に模範となるモデルは海外には存在しないようにも思う。
また、こうした議論のたび、ずっと気になっていることがある。日本の陸上交通を支える有料道路と鉄道という2大インフラの関係だ。 道路と鉄道は、あるときはライバルであるが、あるときは相互補完の役割を果たすが、整備も運賃・料金もバラバラに施策が進められていて、総合的な交通政策を行っているようには見えない。どちらも国土交通省という同じ省庁の管轄であるにもかかわらず、である。 その結果、地方では今も高速道路の建設が進む一方で、JRのローカル線の多くは経営が苦しく青息吐息となっており、都市間を結ぶ特急が削減されたり、路線そのものが廃止されたりしている区間が少なくない。
■人口減と高齢化が進む中で骨太の議論を 2024年3月の北陸新幹線の全線開業で、名古屋方面から北陸、特に福井市、金沢市へ鉄道で向かう場合、原則として、米原と敦賀での乗り換えが必要になった。 利用者にとっては明らかに不便になったため、特に福井~名古屋間の移動は高速バスへのシフトが進んでいる一方、高速バス側は運転士不足で増発したくてもできない状態となっている。 また、南房総や銚子など千葉県の南部や東部へは、アクアラインも含む高速道路の整備により、JRの特急が次々と削減され、マイカーを除くと移動手段は高速バス一択になっており、移動におけるさまざまな課題が浮き彫りになっている。
鉄道と高速道路や高速バスが連携して人々の移動を担うべきなのに、それぞれが連携なく動くことで、全国で不便が生じているように感じる。 今回の変動料金制は、2024年6月に策定される経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に考え方を盛り込む方向で調整しているとのことだが、「骨太」というのなら、人口減と高齢化が進む我が国の交通体系のあり方自体を「骨太」に議論してほしいと願わざるをえない。
佐滝 剛弘 :城西国際大学教授