政治不信が極まり、市場に衆院選挙の追い風吹かず。私腹を肥やすばかりで国民消費を伸ばす政策は皆無。ただ悲嘆するなかれ。資産形成して人生を切り拓け。
●NYダウ最高値更新の一方、日経平均は低迷。衆院選挙の追い風全く吹かず 465議席を争う今回の衆議院選挙。自民党総裁選で高市早苗氏を破り石破茂氏が勝利、そして石破氏の首相就任から戦後最短の8日後の10月9日に衆議院は解散された。15日公示、27日投開票というスケジュールが設定され、今まさに選挙戦たけなわとなっている。 前回のコラム『米国はソフトランディングではなくノーランディングの可能性』の冒頭で私はこう言った。「選挙は株式市場にとって追い風となるのが普通だが、今回の衆院選では自民党がかなり議席数を減らすことが確実視されており、追い風が吹かない可能性もある」。衆議院が解散された日の日経平均株価は3万9277円、そして、この原稿を執筆している10月17日は3万8911円。むしろマーケットは下落している。NYダウが同期間比較で4万2740ドルから4万3239ドルと連日で最高値を更新しながら上昇しているのとは対照的だ。 ●日本の凋落ぶりを見れば、国民のための政治が行われていないのは明らか ところで、皆さんは今回の選挙をどのように思われているだろうか? 今回の選挙ほど国会議員による国民への裏切り行為があからさまとなり、選挙の争点になったことはないと思う。とは言え、元々見つからないようにうまくカムフラージュされていたものが露骨な形で大っぴらになっただけだと私は考えている。選挙と言っても、本当に心から支持できる政党や政治家が存在しないならば意味がない。支持していたにも関わらず、裏切り行為が次々と明らかになったのならば尚更だ。国民にとって真の選択肢がないのが現状だと思う。新総裁就任後の石破氏の発言を毎日見ているが、発言はブレブレ、突然のちゃぶ台返しの連発、ダメダメ雰囲気プンプンの彼のどこに日本の未来を託せるのだろうか。石破政権の支持率は発足時が51%、そして今や28%と世論調査は報じている。物凄い下落だ。 60年間生きてきた私見だが、政治家とはとどのつまり、特権的待遇や権力を求める人たちの烏合の衆である。だから「国民のための政治」と言いつつ、国民に隠れて自分たちに都合のいいことばかりコソコソやる。それから世襲議員もいらない。かような悪しき風習が存在するのは先進国では日本だけだ。国民の心に響き、かつ国民に利益をもたらす政治などこの30年間行われていない。特に2000年以降の国際社会における日本の凋落ぶりを見れば一目瞭然である。また与党を批判する野党の人たち。彼らも結局は国会議員という地位に甘んじている人だらけだ。与党を覆すだけの確固とした対立軸すら全く用意できていない。どうしようもない状況にあると思っている。 ●個人消費の伸長が最重要にも関わらず、増税など逆行する政策ばかり 政治のあり方は各自が考えるべき課題だが、私が期待している政治の方向性はこうだ。 日本の主役は我々日本国民である。その主役を痛めつけたり虐げたりするような政治はご免だ。日本の国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費。経済力を表すGDPが成長するためには、個人消費が伸びなければ話にならない。だが、個人消費が増える政策が全く行われず、逆行することばかりが次々と施行されてきた。米国のGDPは7割が個人消費だが、個人消費が年々増えることによって経済が成長しているのとは対照的だ。 最大のアキレス腱は1989年に導入された消費税である。スタート当初は3%だったが。1997年に5%、2014年に8%、そして2019年に10%と3回引き上げられた。「高齢化社会への対応、税負担の公平を高めるための直間比率の是正(直接税を減らし間接税の比率を上げる)」が目的だったが施行から今年で35年。消費支出が伸びず、日本のGDP成長率がグローバルで凋落していったのとピタリ符号する。 対照的なのが法人税率だ。1997年時点では37.5%だったが1999年に30%、2012年に25.5%、2018年には現行の23.2%まで低下。「海外企業の日本誘致を促進し、日本企業の国際競争力を高める」というお題目が掲げられたが、実際にはそのようなことは起こらず、日本企業の税負担が下がった分だけ企業の懐が厚くなった。企業の内部留保は現在601兆円。2000年は200兆円程度だったため3倍に増大。一方、人件費は1990年代半ば以降、200兆円前後で推移し、2023年度は賃上げ効果で221兆円となったがほとんど伸びていない。2023年度の日本政府の税収は72兆円。一番の柱が消費税の23兆円(32%)、次に所得税の22兆円(31%)、そして法人税16兆円(22%)となっている。何をやればいいか一目瞭然だ。企業が儲かることは重要だが、国民が消費支出を抑えるほどの負担を強いられているのが大きな問題だ。国民は消費税にとどまらず、社会保障費の増加や各種増税に直面している。ようやくデフレから脱却して賃上げできる時代になったが、今の物価上昇ではそのメリットを十分享受できず生活は一向に楽にならない。 ●国民への配分を増やし、後ろ向き志向から解放し、消費を伸ばす政治を! 私が政治にやって欲しいのは、資産運用における「複利運用」の政策である。国民への配分を増やし、国民を節約志向や後ろ向き志向から解放し、消費が伸びていくことで経済が発展する仕組みを作ることだ。現状は「国民から搾取」ファーストの政策になっており、国民が十分に消費できないことで経済がどん詰まりになっている。私たちの心は閉塞感しかない。経済の果実を生み出す前の段階で、国民の大事なお金が国に奪い取られている。こんな状況にさらに追い打ちをかけるのが、生活困窮層にお金をばらまくために「富裕層から金をもっと取れ」「資産運用の利益から金をもっと取れ」という政策の提案。ダメダメ政治が行きつくところの末期症状だと思う。国民全体の負担を下げる政策が大事なはずなのに。 とは言え、私が述べた政策が実現するは現状無理だ。でも、政治が変わらなくても自分を変えることはできる。私はそうして生きてきた。もちろん選挙は一度も欠かさず投票している。でも何も良くならなかった。「政治がダメだから自分の生活が良くならない」と嘆く人たちがいるが、それはまた違う問題だ。自分の不遇を政治や社会のせいにする人たちには残念ながら未来などない。なぜか? 自分で切り拓こうとしないからだ。政治がダメでも、人生はいくらでも切り拓ける。「そんなの無理」と言っている人たちは、そもそも切り拓くことを諦めているか、切り拓く努力を放棄している人たちである。一番期待できるのは、やっぱり自分自身だ。 ●「勝者のポートフォリオ」を糧に資産形成に臨み、人生を切り拓こう! さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。10月3日(木)開催のセミナーは過去最高の324名の参加者となった。『金融相場初動で石破ショック、今後のマーケットはどうなる? 』というテーマで2時間45分のロングランセミナーだった。次回は11月14日(木)20時より開催する。衆議院選挙、米大統領選挙、そして11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が出た後での開催だ。非常に重要なセミナーになると思う。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。 そして、スペシャル講義では『ポートフォリオ理論』に続いて太田流『ポートフォリオ実践』がスタートした。資産運用においてポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須であり、個人投資家にそれを身に付けてもらうことを目的としている。最近ではシステマティックリスク(株式市場全体のリスク)について講義しており、「バブルの定義」や「ヘッジファンドの実態」など貴重なテーマを取り上げている。資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。 ●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
太田 忠
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