レッドブル重鎮マルコ博士、ニューウェイ離脱を語る「燃え尽き症候群のような状態だと思う」
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコ博士は、チーフ・テクニカル・オフィサーを長年務めてきたエイドリアン・ニューウェイがチーム離脱を決めたことは、「燃え尽き症候群」のようなモノであると考えていることを明かした。そしてマシン開発の”頭脳”とも言えるニューウェイが離脱したとしても、チームには有能な人材が数多くいるため、高いレベルを維持することができるはずだと自信を覗かせた。 これが鬼才の仕事。エイドリアン・ニューウェイ作のベスト10マシン レッドブルは5月1日にプレスリリースを配信し、ニューウェイがチームを離脱することを正式に発表。今後ニューウェイは市販ハイパーカー”RB17”の開発を完了させた後、2025年の第一四半期をもって、レッドブル・グループを離れることになる。 ニューウェイはレッドブル離脱後の計画はまだ決まっておらず、「少し休んで、人生の棚卸しをするいい機会」だと語った。 そしてマルコ博士は、ニューウェイがチームを去る決断をこんなにも早く下すとは思っていなかったと明かした。 「こんなにも早く、こういうことが起きたことには驚いている。もちろん、それは大きな損失だ。彼は素晴らしい人格の持ち主であり、最も成功した、世界最高のレーシングカーデザイナーだ」 そう語るマルコ博士に、チーム内の権力闘争がニューウェイ離脱の引き金となったのかと尋ねると、彼は次のように語った。 「まさに燃え尽き症候群のような状態だと思う。彼は『完全に集中していないのなら、辞めた方がいい』と言っていたけど、私はその決断を賞賛するよ」 ここ数年、レッドブルは圧倒的な強さを発揮してきた。しかし、ニューウェイが離脱することで、その勢いが削がれるとは考えていないと、マルコ博士は語った。 「我々は強力な技術チームを抱えているから、苦しむようなことはないと思う。ピエール・ワシェ(テクニカルディレクター)のような経験豊富な人材もいれば、ベン・ウォーターハウス(パフォーマンスエンジニアリング責任者)のような若手もいる。こういう組み合わせにより、高い水準を維持できると確信している」 そうマルコ博士は言う。 「我々の技術チームは、エイドリアンがいなくともそれができることを証明しなければいけない。しかしもちろん、新しいレギュレーションが施行された時、それを最もよく理解するのが、彼の強みのひとつだった」 「でも、我々のチームには成功を渇望する人たち、経験豊富な人材と若い人材がうまく混ざり合った、非常に幅の広い技術チームがある。彼らはとても良い仕事をしてくれるはずだ」 ニューウェイは前述の通り、2025年の第一四半期でレッドブル・グループを離れることになるが、その翌日から他のチームに移籍することが許されるという。通常、ニューウェイほどの重要人物ともなれば、チームの秘密が漏洩するのを防ぐため、長期間の”ガーデニング休暇”を取ることになるのが普通だ。 なぜニューウェイにはガーデニング休暇を取ることが求められなかったのか? それについてマルコ博士は、次のように説明した。 「もちろん、ガーデニング休暇を取らせることもできた。しかし彼がチームにもたらした利益を考えると、公平である必要があることは分かっている」 「双方にとって公平な解決策を見つけることが、全ての人の意志だったんだ」
田中健一/Ronald Vording
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