ゲス記者、実はスズ子の大ファンだった…『ブギウギ』制作統括が語る鮫島の本心「スズ子から元気をもらっていた」
現在放送中の『ブギウギ』(NHK朝ドラ)の最終週。3月27日に放送された124話では「福来スズ子歌手引退報告会見」の模様が描かれ、スズ子(趣里)が歌手を引退することを報告した。記者席には、三流雑誌『真相婦人』でスズ子にまつわるゴシップ記事を書き続けてきた記者の鮫島(みのすけ)の姿もあった。 【写真】鮫島の記事を改めて読んでみると… スズ子とりつ子(菊地凛子)に仲違いさせるために対談の席を設けたり、アユミ(吉柳咲良)がスズ子に「ラッパと娘」を歌わせてほしいと願い出る瞬間を盗撮した写真とともに偏向記事を書いたりと、ゴシップ記者としての「辣腕」ぶりを遺憾なく発揮してきた鮫島。引退記者会見の場でも期待を裏切らず(?)、ゲスな質問でスズ子に揺さぶりをかけるが、覚悟を決めたスズ子の受け答えは潔く、見事なものだった。 ■ 鮫島の記事を拡大すると…こじれたファン心理が? しかし、これまで劇中に出てきた鮫島が書いた記事を拡大してみると、見出しは下世話だが歌手・福来スズ子の「歌」の部分へのリスペクトは欠いていないことがわかる。鮫島はおそらく音楽への造詣が深いのだろう。いつも言葉の端々からスズ子へのこじれたファン心理が垣間見えていた。 会見の終わり際に、鮫島は「まったく歌手に未練はない?」「寂しくなるな」「最後に1曲聴かせてほしいな」と、初めてファンとしての素直な気持ちを包み隠さず伝えた。この、面倒臭くも憎めない鮫島という男の造形について、制作統括の福岡利武さんに聞いた。 ■「鮫島自身もスズ子から元気をもらっていたんだな、と」 福岡さんは、「そうなんです。見出しはともかく、記事本文をよく読んでみると、そんなにひどいことは書いてないんですよ。やはり鮫島はスズ子のことが好きで書いていたということなんですよね」と、鮫島というキャラクターの設定を説明した。 しかし、その「出しどころ」が難しかったと言い、こう続ける。「『実は鮫島もファンだった』というところが、はじめからはっきり出過ぎてしまうと面白くない。その実に微妙なラインを脚本の足立紳さんに書いていただけましたし、みのすけさんに見事に演じていただけたなと思います。会見の最後、帽子を取って敬意を表した鮫島の拍手も、とても良かったですよね。やっぱり鮫島自身も、スズ子から元気をもらっていたんだなと、あのシーンを見て改めて感じ入りました」。 スズ子の引退を伝える記事で鮫島は、「羽鳥先生にはどんなに感謝してもしきれない」「先生がいなかったら今の自分はなかった」とまっすぐな見出しを書いた。「人間はダメでどうしようもないところもあるけれど、それが愛おしい」ということを描き続けているこの朝ドラ。まさに鮫島も『ブギウギ』界の住人らしいキャラクターだ。 取材・文/佐野華英